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第37夜 ページ37

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山田の家の前に停めてあったタクシーに乗って、向かったのは大ちゃんの家。

部屋の中に入ると、大ちゃんは大げさにため息をつく。


「大ちゃんは、」

「ん?」

「なんで来たの?」


たどたどしく紡いだその質問に、大ちゃんは笑いながら首をかしげた。


「そっか。俺と知念が来なかったら、うまくいってたもんね?」

「ちが、そうじゃな……」


もちろん、そう思っている自分もいて、あながち間違いではないから途中で口を閉じた。


大ちゃんがぼふっとソファに身を投げ出して、小さく口を開く。


「……俺も、人のこと言ってらんないね。」

「ん、なにが?」


その隣に座ると、大ちゃんの表情は髪の毛で見えなくなった。


「知念、泣いてたじゃん。」

「ん。」

「泣かせたの、俺だよ。少しは俺に傾かないかなーって思ったの。」

「……なにしたの?」


踏み込んでいいのか一瞬迷って、おれは口を開く。

大ちゃんがこっちを向いたおかげで、やっと表情が見えた。


「さいってーなこと。聞きたい?」

「聞きたい。」


すぐにうなずくと、大ちゃんは一瞬むじゃきな笑顔を見せてから、言葉を紡ぎ始めた。


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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年3月21日 13時

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