第30夜 ページ30
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「寒くない?」
「ん、へーき」
小さく音を立てるブランコに座って隣の山田を眺める。
公園の入り口にある自販機が、その顔を控えめに照らしていた。
山田は話したいことをまとめているみたいだったけど、なんとなくおれは口を開いてしまった。
「山田、なんで知念と付き合ったの? 恋愛対象じゃなさそうなのに」
結局おれは山田が好きで、知念が羨ましくてしょうがないのかもしれない。
「……だって知念、泣きそうだったもん。俺がなんとかしなきゃって」
山田は元来、ヒーロー気質なんだと思う。
ときどき、ヒーロー気質が過ぎて自分を押し殺そうとしているような気もしなくはないけど。
「おれだったら、絶対振っちゃうけどなぁ……」
小さく呟いた言葉を山田は聞き逃さず、こちらを見て首をかしげた。
「なんで? メンバーだし、幼馴染みも同然の人だよ?」
「メンバーより、幼馴染み同然の人より、大事な気持ちだってあるでしょ」
おれがそんな言葉を放つと、山田は少し押し黙った。
「それは……、自分の気持ちが大事ってこと?」
「まー、そんな感じ?」
テキトーにうなずいてみると、山田は下を向いた。
そっと覗き込むとなんだか辛そうな、泣きそうな、見てるこっちの胸が痛くなるような、そんな表情をしている。
その綺麗な唇から押し出された、少し掠れた声と、寂しそうな言葉。
「……だから伊野尾ちゃんは、笑ったの?」
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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年3月21日 13時