いくつもの夜を (ページ23)

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第23夜ページ23

ym side

「……んっ、……ふっぁ、は、」

伊野尾ちゃんの小さくて控えめな声がさえよく響く、静かな夜だった。

伊野尾ちゃんに連れられてやって来た伊野尾ちゃんの家、伊野尾ちゃんの寝室。

電気を消してカーテンを閉めた部屋は、カーテンを透かして入る月明かりだけで照らされていた。

「……や、まだぁ……っ」

ぽろぽろと、俺にはよくわからないけど、たぶん生理的な涙を零して俺の名前を呼ぶ彼に、そっと口付ける。

泣き止ませてよって言ったくせに、自分から誘った行為で泣くのはどうなのよ。

なんて、ちくちく痛む胸を隠すために心の中で毒を吐く。

最近、伊野尾ちゃんと行為をすると、罪悪感かなにかでちくちく胸が痛んで、その度に彼の体だけにすがるようにがっつく自分がいた。

・・・・・・

「伊野尾ちゃん、寝ないの？」

行為後でも静かな部屋は暗くて、白い彼の肌を浮かび上がらせていた。

いつもなら疲れて眠ってしまうはずの彼が、今日は起きていた。まぁ、少しぼーっとしているけれど。

「……寝られない」

「子守り唄でも歌う？」

「やだ。……そんなことしたら、おれねちゃうもん」

寝たいのか寝たくないのかわからない伊野尾ちゃんだけど、とりあえずこのまま起きているつもりらしい。

「……ん？」

時刻を確認しようとスマホを手に取ると、知念からメッセージアプリでメッセージが届いていた。

今どこ？と、伊野尾ちゃんと一緒？っていう旨のメールだった。

「知念から？」

「ん？うん」

なんでわかるんだろう？
さっき伊野尾ちゃんに、山田はエスパーみたいだって言われたけれど、俺には伊野尾ちゃんの方がよっぽどエスパーに思える。

「……なんか、山田と知念って仲良いよね、やっぱり」

拗ねているような、諦めているような。

伊野尾ちゃんのそんな声を聞いたのは初めてだったから、俺は思わず顔を上げた。

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