いくつもの夜を (ページ18)

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第18夜ページ18

in side

「涼介とそういうことするの、やめてほしい」

「……なんで？」

最初に出てきたのは、その言葉だった。

なんでやめなきゃいけないの？
なんで知念に言われるの？

「なんでって…じゃあこっちが聞くけど、涼介とそういうことして、伊野ちゃんにメリットはあるの？」

明らかにデメリットの方が多いから、そう言われると何も返せない。

女の子、抱けなくなるかもしれないし。
やった次の日は体が痛くて仕事に集中できないし。

それでも、おれが了承してやってることだから。

「ねえ、大貴は伊野ちゃんが好きなんだよ」

「……うん」

ここでいう好きは、メンバーや友達としての『好き』じゃない。それはわかってた。

「涼介と伊野ちゃんの関係は、大貴を傷つけてまで続けなきゃいけないのかな」

知念はやっぱり頭がいい。
おれ達の関係の一番弱いところを突いてくるから、簡単には否定できない。

それでも必死に、言葉を絞り出す。

「……なんで知念は、大ちゃんのこと守ってるの？大ちゃんが守ってほしいって言ったの？」

「そ、れは、言われてないけど……」

否定するとしても、当たり障りのない、優しい言葉は選べない。

「勝手に傷つけるのはだめで、勝手に守るのはいいの？知念もずいぶん勝手だね？」

きっと、知念は正しい。

でも、間違っているものを、おれ達の関係を正しいって言うためには。正しいものを間違ってるって言わなきゃいけないから。

「大ちゃんが傷つくのは、大ちゃんの勝手だよ。おれには関係ない」

そう言い切った瞬間、乾いた音がおれの頬で響いた。それが平手打ちだってわかったのは、少ししたあとだった。

「……伊野ちゃんって、もっと話のわかる人だと思ってた」

「ごめん、話のわからない人で」

ジンジン痛む頬と、涙目で睨んでくる知念の視線と一緒に店から出た。

「…あ、綺麗」

空を見上げると綺麗な月が輝いていた。
なぜだかそれは、ある人を連想させる。

いつもだったら、自分から会いに行ったりしない。呼ばれたら行くだけだった。

でも、今日だけ。
今日だけなら、会いに行ってもいいかもしれない。
それに、メンバーとしてなら全然おかしくないし。

心の中で言い訳にもなっていないような言い訳を重ねて、おれは歩き出した。

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