いくつもの夜を (ページ9)

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第9夜ページ9

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「お邪魔しまーす。…うわ、大ちゃんの家久しぶりだ」

「伊野ちゃん誘っても来ないんだもーん」

「『だもん』とか、全然可愛くないから。………じゃ、さっさと終わらそ」

いくら久しぶりだからって、大ちゃん家の間取りは忘れてない。強引に大ちゃんの腕を引っ張って、寝室へ連れていく。

「…え、ほんとにいいの？昨日やったばっかでしょ？体辛くない？」

「辛くないよ、慣れてますから。……山田も、いつもはこんなにがっつかないんだよ？」

この頃の山田はよくわかんないけど、必要以上にがっつく。おれが文句を言わないからいいけど、彼女さんとかにやったら引いちゃうレベルだよ？

ま、次の日は優しくご飯を作ってくれるからプラマイゼロかなぁ、なんて。

「…山田、上手い？」

大ちゃんがおれのシャツのボタンを外しながら聞く。

「山田以外の男とやったことないもん。…でも、お互い気持ち良くなるためにやってるわけじゃないし」

「そうなの？それ、意味ある？」

「ストレス発散とか？」

おれがそう言うと、生々しいだとか愛が無いだとか、大ちゃんがいちいちうるさい。

生々しくても、愛がなくても、おれと山田はやってけてるんだからいいじゃんね？

「…ね、早くやろ。ただし、腰痛いから優しくしてね？」

「うわ、女子かよ」

うるさい口を自分から塞いだ。もう、いちいち時間かけすぎ。待ってらんない。

「……ん、……女子じゃないけど、今夜は大ちゃんのものだよ。お好きにどーぞ」

こんな台詞、山田との初めての時にも言ったっけ？おれってレパートリー少ないのかも。

大ちゃんに抱かれたら、山田はなにか言ってくれる？それとも、気付かないかな。

…待って。これじゃあ、おれが山田の気を引きたくて大ちゃんを利用してるみたいじゃん。ないない、有り得ない。

あーもー、こんなのこーゆーことやってる途中に考えることじゃないんだから！

一回だけ頭を大きく振って、思考をシャットダウン。そのまま、大ちゃんの手に体を委ねた。

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