いくつもの夜を (ページ33)

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第33夜ページ33

ym side

「涼介って、ほんとは伊野ちゃんのこと好きなの？」

むう、と頬をふくらませた知念は、その柔らかそうな頬とは違った鋭い視線で俺を見た。

原因は、俺が伊野尾ちゃんのことを可愛いって言ったからなんだけど。

「いやいや、知念だってもちろん可愛いいよ？」

「伊野ちゃんより？」

「……違う系統だよね、二人は」

知念が小悪魔みたいな可愛い！って感じの可愛さだとしたら、伊野尾ちゃんは見てるこっちの心を絆すような可愛さ。

ちなみに大ちゃんは、ちっちゃい子供を見てるような微笑ましい可愛さ。

「……じゃあ、どっちの方が好き？」

「……知念ならわかるんじゃないの」

付き合ってるんだから、当たり前。

知念に抱いている感情と、伊野尾ちゃんに抱いている感情は全く別物。

知念への感情が恋愛感情だとしたら、伊野尾ちゃんに抱いているのはなんなんだろう？

「……涼介、好き」

「ん、俺も」

そう返すのに抵抗もないし、そう返すと知念はいつも嬉しそうに笑ってくれるから。

「はいはい、ストップ！！楽屋でイチャつかないでくださーい！」

いつの間にか近づいていた顔の距離を遮るような声を出したのは大ちゃんだった。

「もー全くー！見せつけないでほしいよ。ねー、伊野ちゃん？」

「へぁ？あ、うん、そうだね」

急に話を振られて困っているだろう伊野尾ちゃんの方に目を向けると、何故だか切なそうな目で大ちゃんを見ていた。

「あ……れ？」

伊野尾ちゃんって、大ちゃんのことが好きなんだっけ？

あれ、じゃあ両想いなの？
でも、この様子じゃまだ気持ちを伝えてないのかな？

「……わっかんねー」

伊野ちゃんの思考回路なんて俺にはわからなくて、小さくため息をつく。

……そうだ、伊野尾ちゃん呼ぼう、俺の家に。

人の色恋沙汰に首突っ込むなんて性格悪い気もするけど、気になるんだもん、しょうがないじゃん。

この興味が『伊野尾ちゃんだから』湧くのかもしれないだなんて、この時の俺はこれっぽっちも考えていなかった。

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