ユニゾン・ウェーブ

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臣「今も別に興味ねーけど、
でもいいなぁとは思うよ。
あいつすげー楽しそうじゃん」



いきいきとした表情で
隆二さんに対して一生懸命説明するAさん。

うらやましくなるくらい、楽しそうだ。





俺は、Aさんみたいに
打ち込める何かを持っていない。

中学の時バスケ部に入ったのは
臣さんに誘われたからだったし、
バスケ自体は楽しかったけどそれだけだった。

勝ちたいとか負けたくないとか、
大会に出たいとか
そういうやる気みたいなものは全くなかった。

他のこともそうだ。

昔から俺は努力しなくても何でもできた。

今だってそう。

勉強しなくてもできる。

スポーツもそこそこできる。

何もしなくても女が寄ってくる。

そんな毎日に、俺は倦んでいた。



だけど、楽器は全然だ。

思い通りの音が出ない。

そもそもAさんは厳しくて、
いくら楽器をやらせてくれと言っても
1週間きっちりリードだけで練習させられた。

思い通りにならない楽器。

思い通りにならないAさん。

退屈だった学校生活に、起きた異変。

それが楽しくて、
リードだけのくそつまんねぇ練習だって
耐えられた。



臣「俺は興味ねーけど、
あいつの服脱がした責任は取らなきゃなー」

岩「……ほんとっすよ。
巻き込まれたこっちはいい迷惑です」



今ここに俺がいるのは
元はといえば臣さんのせいだ。

それをチクリと言ってやると
「んだと、生意気なやつー！」と
頭をわしゃわしゃされる。



それから、健二郎さんと臣さんも
Aさんに教えてもらって
汚い音を出すようになった。

意外にも、隆二さんが一番うまい。

結構綺麗な音を出していて、ご満悦な様子だ。

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