学園長に謁見の段 ページ6
脚の露出が破廉恥だって事で忍装束を渡され着替えた。着方を教わらなくても簡単に着られたので良かった。
「ウム、着替えたの。それでは只今より上級生と教員で会合を行う！道場へ集合せよ！」
号令を飛ばすのは白髪のおかっぱ頭をした老人男性。教員らしき人からは「学園長先生」と呼ばれていた。
道場で学園長先生が上座に座り、私が向かいに座るよう指示される。そして男の子達がコの字型に整列して座る。
「名は何と申す？」
「Aと申します」
「お主が着替えておる間に山田先生達からあらましを聞いた。お主には気を失う直前の記憶が無く、気が付いたら穴の中にいたと」
「はい」
「平滝夜叉丸。誰も歩いておらぬのに突如穴が崩れたと言うのは本当か？」
「はい、本当です！この目でしかと！」
「フム…。お主が身に付けておったこの珍妙な衣じゃが、これに見覚えは？」
「あります。これは私が学園に通う際に着ている制服です」
「斯様な手触りの織物、ワシは初めて目にした。伊賀国ではこのような衣が出回っておるのか？」
「ああ、いえ…そうではないと思います」
「何？」
「仮説ではありますが…私は未来からここへ来てしまったのではないかと」
道場にどよめきが起こる。
そりゃそうだろう。私とて信じたくはないがそう考えるのが一番辻褄が合うのだ。
「皆さんは、恐らく本物の忍者なのですよね？私のいた世界では忍者はもういません。忍者の真似事をする人ならいますが…」
「忍は衰退したと…？」
「そうですね。今は察するに戦国時代。西暦1600年より前。我が国で歴史上一番争いが苛烈に行われていた時代です。そして忍の全盛期でもあったかと思います」
戦国時代という呼び方も、西暦の概念も、この時代にはまだないのかもしれないけれど。
「未来では、戦い方が変化しておるのじゃな？」
「と言うより、日本…日ノ本は一つに平定されました。内乱が無くなったので、忍もいなくなったものと」
再びどよめきが起こる。
きっと忍として日々励んでいる彼らの心境は複雑だろう。
発言に少し後悔した。
「一体誰が日ノ本の平定を！？」
生徒の一人から声が上がった。
「い、言っても良いんでしょうか？」
「個人的な質問は後にしとくれ。
ところで、未来から来たとなると、お主の居場所はこの時代には無い、ということになるのう？」
「…はい」
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年7月31日 17時
