落とし穴に落ちるの段 ページ49
ある晴れた昼下がりのこと。
今日の吉野先生のお手伝いは草抜きです。
この時代には除草剤も防草シートも舗装もないので人の通らない所から草が生え放題なのです。
熊手を片手にちまちまと草を抜いていく作業。地味でキツいけれど頑張っています!
しかしこの前、七松が苦無を両手にクロールのような動きでいけいけどんどんと塹壕を掘っている姿を見て、自分の草抜きが阿呆らしく思えてしまう。
私が一刻かけて抜いた場所も、塹壕掘りなら一瞬で掘り起こせて、あと埋め直すだけで完了するんだろうなぁと。
昼餉をとって、厠へ行って草抜きを再開しようと校庭を歩いていると…
「ふぎゃッ!?」
踏み出した足がいつまで経っても地につかず、落とし穴を踏み抜いたと気付いたのは完全に落ち切った後だった。
「痛ったぁ〜〜…」
穴の深さは恐らく約2.5m、直径は150cmほど。両手両足をつっかえ棒のようにしてSASUKEのように少しずつ登ってゆくのも私のフィジカルでは不可能。
草抜きで使っていた熊手も手元にあれば使えたかもしれないのに、穴の外に落としたようだ。
ふ、不運だぁぁぁぁぁ!!
「誰かーーーーっ!」
誰も来ない。今授業中だからなぁ…。
これは気長に助けを待つしかない。厠に行った直後というのが不幸中の幸い。
放課後まであと一刻(※2時間)ほど。さすがに放課後なら誰かが通り掛かるに違いない。
「落とし穴なんて初めて落ちたなぁ。この時代に来た時は落ちた瞬間の記憶はなくて、気付いたら穴の中にいたって感じだからなー」
…待てよ。
落とし穴を通じてこちらの時代に来てしまったって事は、毎日落とし穴に落ち続ければいつかは元の時代に戻れるかもしれないよね!?
いや〜何で気付かなかったんだろう!?
落とし穴は喜八郎君に頼めばきっと掘ってくれるだろうし、用具倉庫から縄梯子借りてきて木に括りつけて梯子の先を持って一緒に落ちたら一人でも登って来れるし!
「私ってば冴えてる〜〜!」
あとは落ちる時の恐怖心だけだね!実はこれが一番厄介かも?
知ってて落ちるのは怖いからちょっと浅めに掘ってもらって、あとはあんまりたくさん落ちて怪我だらけになっても困るから、一日一穴で!
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時