其の弍(三木ヱ門視点) ページ45
「「はぁ??」」
「次の授業、俺の苦手な科目なんです!だからAさんから元気を注入して欲しくて!」
お前は注入されなくともいつも元気だろ…。
つか注入て何だよ、普通に応援して下さいでいいだろ!
「注入って、どうするのが正解?」
ほらみろ、困っておられるじゃないか!
「何でもいいですよ!どんなやり方でも!」
「強めに頭叩いてやりゃいいですよ」
「ん〜〜…分かった!手出して」
Aさんが守一郎の右手を両手で握手するように掴むと、思い切り力を込めて握る。
「〜〜〜はい!注入!」
「わぁー!ありがとうございます!」
「こんなんで良かったかな?じゃあね!」
立ち去るAさんの後ろ姿をキラキラした瞳で見送る守一郎。
「はぁ、Aさんが俺に会いに来た〜」
それからは一日中、締まりのない顔でそれしか言わない。
「あのなぁ、あの人が会いに来たのはお前じゃなくて私にだぞ?」
「いやでも俺の顔見に来たって」
「そんなもの付け足しに決まっているだろ!どう考えても帳簿を渡す用事の方が重要だ!」
「いや、そうかもしれないがよく考えてくれ三木ヱ門。会計帳簿なら会計委員会委員長の潮江文次郎先輩に渡せば済む話なのになぜ三木ヱ門なのか?それは友達一号の俺が同じ組にいるからだ!」
「あー、ハイハイ」
でも確かにそうだ。あの方は潮江先輩の隣室だから渡す機会などいくらでもありそうなのに、どうして私に?
うーん、なんだか気になって仕方がなくなってきた。
放課後、会計委員会にて。
「潮江先輩、今回の会計監査もつつがなく通りました」
「おお、そうか。わざわざ吉野先生の所へ取りに行ってくれたのか?気が利くな!」
「いえ、Aさんが私の教室までわざわざ届けに来て下さったんです」
「Aが?お前達そんなに仲良かったか?」
「きちんとお話したのは先程会計帳簿を渡しに来て下さった時が初めてですが」
「そうか」
気分を害しておられる訳じゃなさそうだが、どうして俺じゃないんだ、って顔をされている…。
触らぬ神に祟りなしっと。
「どうしてお前に渡したんだ?」
掘り下げて来た〜!
「分かりませんけど…守一郎に会いに来たのでは?」
たぶん違うけど。
「浜に?どうしてだ?」
「守一郎は友達一号とか言ってましたけど…」
「はぁ!?何をふざけた事を。一号は俺だと言っとけ」
「…ハイ?」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時