飼育生物を見に行くの段 ページ37
天井板はずれていないことにひとまず安堵する今朝。
左へ寝返りを打ってから起きようとして、太腿の刺すような痛みに、昨晩の出来事を思い出す。
そして、左脚が冷たいことにも気がついた。包帯をきつく巻き過ぎたようだ。
すぐ解いてもう少し緩めに包帯を巻いておく。
「よし。着替えよ……う?」
忍装束がない!
昨日くのたまのお風呂を借りて、その時に頭巾を風呂敷代わりにして脱いだ忍装束を包んで、忍たま長屋に帰る途中で襲撃されて、その時に落としたまま?
マズイな〜〜〜〜!!
朝っぱらからそんな遠くまで寝巻きで歩くのはな〜〜!!
というのも、忍術学園では夜間と顔を洗いに行く時だけ寝巻きで出歩くことを許される。それ以外は基本は忍装束、街へ出掛ける時は伊賀袴や小袖などに着替える事とされているらしい。
つまり、寝巻きで彷徨くというのは、ホテルに宿泊して寝巻きの浴衣で朝食会場に行くようなものだ!!
もう朝だし仙蔵達帰ってきているかな?
訳を話して取って来てもらう?いや夜の実習明けなら夜勤明けみたいなものだろうし何だか気が引けるな。
それに…
『曲者に襲われた際に落とした!?狙いはお前!?存在自体が忍術学園を危険に晒すようなお荷物、さっさと攫われてしまえばよかったものを…』
なんて言われたら辛い。辛すぎる。
はっ!!五年長屋なら六年長屋の隣だ!そこまでなら自然に歩いていける!五年の誰かに頼むしかない!!
そう思いそっと戸を開けると、戸の前に綺麗に畳まれた忍装束が置いてあった。
(あの後三郎が拾ってきてくれたんだな)
声くらい掛けたらいいのに、不器用な人。
◆
食堂に行くと八左ヱ門君の元気な声に呼び止められた。
「おはようA!」
「おはよう!早いね?」
「俺は生物委員会だから、朝は餌やりで早く起きてるんだ」
「へえ、何を飼育してるの?戦で乗る馬とか?」
「色々いるけど、ざっくり言うと兎とか亀とか狼とか、毒虫かな」
「狼!?」
「うん、もしかして興味ある!?」
「ある!あれだよね食堂で大きな声では言えないけど、糞が狼煙に使えるんだよね?」
「そうそう!飼ってればわざわざ山へ拾いに行かなくても手に入るんだよ!見にくる?」
「行くー!」
「じゃあ朝餉食べたら見に行こうぜ!」
「さっき餌やりして来たばっかりなんでしょ?今度何かのついででもいいよ?」
「いや、Aが生き物に興味あるってのが嬉しくってさ!早く見せてやりたいんだ!」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時