其の二(三郎視点) ページ31
「そんな事、馬鹿正直に言う曲者がいると思う?」
ここは忍術学園だぞ、どうして侵入を許している!?
小松田さんは気配察知能力においてはプロ中のプロなのに、門から遠すぎて気が付かなかったのか!?
それとも小松田さんの能力をも掻い潜る相当の手練れか…!?
「…あの、そろそろ降ろしてもらえませんか…?」
「君、あまり危機感持ってないようだけど、何かの冗談だと思ってる?」
「えっと…もしかして私、人質にされちゃってますか?」
「残念、君そのものが目的だからね。一緒に来て貰うよ」
「…………」
それを聞いた未来人は急に暴れ出した。
寸鉄は近距離用の武器だし、手裏剣や鏢刀は投げられても未来人を盾に使われる可能性がある。信用は置けない奴だが、何故か奴に傷をつけてしまうのは本意ではない。
「ほらほら、暴れたら危ないよ。ここ木の上だからね。それに君、寝巻でしょ?はだけてしまうよ」
「何故私を!?捕らえてどうするつもりですか!?」
「別に取って食ったりはしない。少々未来について聞きたいと思ってね」
「あなたには死んだって教えない!」
「困ったね…でも君のような強気の女子は嫌いじゃないよ」
曲者は未来人の頬を親指と他の四本指でぶにっと摘み、ぐいっと顔を寄せる。それで怯んだ隙に寝巻の腰紐をするりと解き、わざと見せつけるように地面に落とす。
「ほら、腰紐が落ちちゃったよ。これでもう暴れられないねえ。フフ、すっかり大人しくなっちゃった」
「それ以上妙な真似をしたらお前を殺す!」
私が叫ぶも、曲者はニタァと気味の悪い笑みを浮かべるだけだ。
いや、実際には口布を着けているから笑っているかは定かではないが、包帯でぐるぐる巻きの顔で唯一露出している右目が緩やかに弧を描いている。
「おかしいなぁ。さっき君が向けていた殺気は私ではなくこの子にだった筈。忍術学園は一枚岩ではないのだろう?ならば私が連れ去ってしまっても君に文句を言われる筋合いは無いのでは?」
木の枝の上で立ち上がり、すっかり萎縮した未来人を抱えたまま後ろ向きで塀へと飛び退く。
「逃すかッ!!」
意を決して鏢刀を投げる。このままいけば曲者の左脚に当たる、と確信したも次の間、未来人が暴れて体勢が変化し、Aの左脚を掠めて地面に落ちる。
「い"ッ…!」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時