其の弍(兵助視点) ページ29
「えっ!そうなのかい!?」
「そうそう。私のいた時代でも一昔前までは鼻に詰め物するのが主流だったんだけど、せっかく血が止まっても詰め物を取ったら血の蓋まで取れて再度出血してしまうから、しばらく手で鼻を摘んで少し下向きで座って止めるのがいいよ」
「へえ!でもそれなら上を向いた方が良くないかい?下だと余計に血が溜まってしまいそうな気がするけれど」
「上を向くと血が喉に流れちゃって、それが多量だと気持ち悪くなっちゃう人もいるから」
「そうなのか!いやぁ参考になるなぁ!…そうだ!」
善法寺先輩がAさんの肩をがっしり掴んだ。
目がギラギラと輝いている。
「良かったらもっと色々教えてくれない!?未来の医学の常識をさぁ!!」
「もちろん!私もこの時代にどれくらいの医学があるのか気になってたんだよね〜!」
「じゃあさ、今度一緒に医務室に来てよ!薬を作りながら話したい!」
「伊作君が薬の調合できるのを文次郎君から聞いてて、ぜひ見学したいって思ってたんだよね!嬉しい〜!」
「何だか置いてきぼりだな…。そうだ、久々知はどうして六年長屋にいるんだ?」
「ああ、俺はAさんに用事がありまして」
「…私に?」
「はい。今日くのたまのお風呂を使われるという事で、俺がくのたまの敷地前まで送迎することになりまして。今日は新月で暗いし、道に慣れていないと危ない所があるので」
「そうでしたか、それはわざわざありがとうございます!ええと、久々知さん?」
「はい、久々知兵助です。どうぞタメ口で、呼び捨てにして下さい」
「じゃあ、兵助って呼んでいいかな?」
「はい。また夕餉を終えた頃にお部屋にお迎えに上がりますね。それじゃ」
「ありがとう〜!」
「久々知」
食満先輩が呼び止める。
「はい?」
「俺達がいない間、宜しく頼むな」
食満先輩は真顔だ。
五年生の計略を察知したのか?それとも虫の知らせのようなものか?
「…はい、わかりました。先輩方も実習お気をつけて」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時