其の参(留三郎視点) ページ26
えっ、謝らなきゃなのは俺の方なんだが…!
忘れろって言われたし忘れてやんなきゃ可哀想なのに、俺が鼻血出したせいで騒ぎが大きくなっちまったし…。
「待ってくれ、Aは別に悪くないだろう?そもそも俺達が見てしまったのを謝らなきゃならないのに…」
「ううん。本当は七松が間違った事言ってないのは分かってたんだ。なのに私が気持ちの切り替えが出来なくて、恥ずかしさもあって勢いでひどい態度を取っちゃって…」
「……ハァ、安心した」
「え?」
「用具委員の下級生とはすぐに打ち解け合ってるし、守一郎とは何かいい雰囲気になってるし、俺だけギクシャクしてるのはなんか悔しくて。だから仲直りできて良かったよ」
「いい雰囲気はちょっと語弊あるけど…でも私も食満君と、仲直り出来て本当に良かった!」
「ッ!」
俺だけに向けられた笑顔が眩しい…!
晴れて食満から食満君に昇格しました。
でもせっかくなら下の名前がいいよな。伊作と文次郎はそれぞれ伊作君、文次郎君だし、仙蔵に至っては呼び捨てだ。いいな…俺も呼び捨てされたい。
「なあ、下の名前で呼んでくれないか?」
「うん、留三郎君?」
いい!うん!十分いいけど!
「いや…呼び捨てで」
「じゃあ、えっと、留三郎?」
「ゴッファ!!!」
「留三郎ーっ!?
伊作君〜!!また留三郎が鼻血〜!!」
スマン…A…伊作…。
少しの照れと少しの赤面、少しの上目遣い。この絶妙な具合が俺好みで血が沸騰した…。
Aが俺の手首を取って俺と伊作の部屋まで走る。
「どうしたの、大きな声で…って留三郎!顔が血だらけ!」
「急に何の脈絡もなく凄い勢いで鼻血が出たんだけど、変な病気とかじゃないよね!?」
「うん、病気ではないと思うよ…ね、留三郎?」
「ああ、悪いな、大丈夫だ…」
「Aちゃん、留三郎を連れて来てくれてどうもありがとう。あとは任せて!」
「うん、よろしくね」
「あ…、A」
「ん?」
「仙蔵から今朝の天井裏の件は聞いた。だが今夜は六年生が実習でいないんだ。何かあったら用具委員の守一郎か作兵衛を頼れよ。何なら護衛に付けたっていい」
何か胸騒ぎがするんだよな。
仙蔵の見立てが本当なら、Aの処遇についてまだ学園内が一枚岩になっちゃいないって事だ。俺達がいてこのザマなのに、学園から出ちまったらAはどうなる?
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時