其の参(三郎視点) ページ22
「私は未来から来たって話が突飛過ぎて信用に値しないと思う。身体付きが貧相なのは忍でない証明にはならない。単に頭脳忍※の可能性が出たというだけだ」
※頭脳忍…頭脳を使う忍。対する言葉は体忍。
私は一旦そこで言葉を切って一人一人の顔を見渡した。
雷蔵は下を向いて分かりやすく困り顔。
八左ヱ門は眉根を寄せて思案顔。
兵助は冷静を欠くことなく平常運転。
勘右衛門は私には表情が読めない。
「…今日、六年生が出掛けた後に殺気を隠して背後から刃を突きつける。それで即座に反応すれば、その場で消す」
雷蔵と八左ヱ門ががばりと顔を上げる。
「忍術学園の中で、殺しをやるって言うのか…!?」
「先生方にも六年生にも許可を取らずにそんな事をしたら、お前だってどんな処分を受けるか分からないぞ!?」
「そうだな。だから実行役は私一人でいい」
「背後から襲い掛かる三郎に反応出来なければ殺さないんだよね?寸止めできるの?絶対傷は付けないって言い切れる?」
「…たぶん?」
絶対とは言い切れないけれど、私とて最大限努力はするさ。
「昨日は六年生の見張りをつけて忍たまの風呂に入ったようだが、今日はくのたまの風呂に入ると思われる。
誰かくのたまの敷地まで奴に道案内してくれないか。帰りの道中を狙う」
学園の見取り図を出して来て、一点を指さす。
「夜、ここは人通りが無くなる。狙うならここだ」
「本当にやるつもりかい?」
「ああ。信用に足る人物かどうかまだ判断材料が少な過ぎる。再度様子を見に行ったら庄左ヱ門と随分話し込んでいたし、おかしな事を吹聴される前に見極めたい」
「三郎の気持ちも分かるっちゃ分かるけど〜〜…」
「どうしても敵認定したいっぽいねー」
八左ヱ門は頭を抱え、勘右衛門は冗談っぽくからりと笑う。二人は乗り気ではないから道案内役は不適格だ。
「兵助か雷蔵、どうだ?」
「…俺、やるよ」
兵助が雷蔵を横目で見てから言う。
そう言うと思った。お前はそういう奴だ。雷蔵が迷い癖を発動したら決断してくれる優しい奴。
「ありがとう。汚れ仕事は私がやるから。ちゃんと私は鉢屋三郎で、不破雷蔵ではないことも示すつもりだから安心してくれ」
「…分かった」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時