其の参（文次郎視点） ページ18
「伊作って…昨日夕餉を一緒に食べた、優しいお兄さん風の？」
「ああ、あいつは保健委員会委員長なんだ。薬を作ったり、忍たまの怪我や病の治療したりしている」
そう教えてやれば、コイツはキラキラと瞳を輝かせて食いつく。
逗留するならすぐ知り得ることだから言ったが、疑いが晴れていないのに伝えるべきではなかったか…！？
「伊作君は薬の調合だけじゃなくて、病を診ることもできるんだね！凄いや…！」
「本人に伝えたら喜ぶぞ」
「また伊作君とこの時代の薬や医学について話したい！」
「機会はいくらでもあるさ」
「やったー！」
よし、何とか機嫌は取り直したし。
「俺は鍛錬を終えるがAはどうする？」
「んー、部屋の前の廊下で座ってようかな？それくらいだったら誰も怪しまないよね？どうせ監視されるなら部屋の中覗くんじゃなくて公の場でやって欲しいし。
あの天井の木目を見ていて人間の目まで見つけてしまった時の心境ったら。真剣に漏らしたかと思ったわ！！」
「ああ…まあ驚くだろうな。朝餉が摂れる刻限までは四半刻(※30分)もないし、縁側で座って待ってるといい」
「そうするね。何か言われたら文次郎君の許可取ったって言お〜」
悪戯っ子のように不敵に笑う。何だかその表情に一瞬息が詰まるような感覚に陥る。
初めて見る女子のそんな表情に、不覚にも愛らしいだなんて。俺らしくもない、やはり寝不足で思考がおかしくなっているらしい。
「俺の許可を取ったとか言って妙な真似はするなよ！？」
「しませんしません〜。部屋の外にいた事を咎められたらそうやって返答するだけ！」
「様子がおかしいと思ったらすぐに部屋の中にぶち込むからな！」
俺は今から会計帳簿の作成を自室でするから、廊下の気配にも気を配っておこう。
未来の話の段（庄左ヱ門視点）→←鍛錬の手伝いの段（文次郎視点）
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年7月31日 17時
