其の弍 ページ15
そんな私を慰めるかのように仙蔵は私の肩に手を置く。
「私は、天井裏にいた者はお前に危害を加える目的は無かったと考える。もし暗殺ならばどんな馬鹿忍者でも覚醒しやすく人目につきやすい朝方など選択しない。
単にお前に興味があり、明るい方が顔がよく見えるからと考えるのが妥当だ」
「はぁ〜〜〜。なんだ……」
自室で監視されてることに気付いた時の恐怖たるや…。
単に興味本位の覗きだったのか。
七松の言う通り、細かい事は気にせず色々と寛容になろう。いちいち気にしていたらこの時代で生きていけないや。
「ごめんね、朝っぱらから騒いで。もう天井の人と目が合っても気にしないよう努力する」
「そこは気にしろよ」
「さあて。とりあえず問題も無かったことだし早朝鍛錬するか」
文次郎君は片腕をグルングルンと回しているけれど、目元にはくっきりと隈が刻まれている。
「起こしちゃってごめんね。もう少し寝た方がいいんじゃない?隈が出来てるから」
「Aの言う通りだぞ文次郎。今は寝ておけ」
「何もせず寝ている時間が勿体無いんだよ」
あー、文次郎君は未来に生まれていたら徹夜してまで仕事や趣味に没頭するタイプだ。ストイックな人は素敵だけど私は心配よ。
「お前はどうする?朝餉にはまだ早く食堂は開いていないが」
「んー、何もする事ないからなぁ。まだ信頼ないのにその辺散歩して要らぬ嫌疑を掛けられたくもないし」
「ならば文次郎と共に鍛錬をして過ごすのはどうだ?最高学年の者が共にいれば疑いも掛けられずに済むだろう」
「はぁ!?そんな事を言うなら仙蔵!お前が見てやればいいだろう!?」
「忘れたか?今晩は六年生は実習だ。今のうちに睡眠を取っておかねばならん。寝不足は肌にも悪いしな」
押し付け合われてる〜。哀れ、私。
「いいよ二人共。私は今から着替えて厠へ行って顔を洗って鐘がなるまで自室でじっとしてるから」
すごい説明口調だけど、とにかく疑われたくないので今からの予定を全て説明しておく私。
それに鍛錬などやりたくないし。あ、二度寝しようかな?
「……仕方ない、早く支度しろ。その代わり俺の鍛錬を手伝え」
え〜〜〜〜どうしてそうなるよ?
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時