そこは室町の段(喜八郎視点) ページ2
どうもー
綾部喜八郎でぇーす
えー、本日は外での作業に最適な気候により、落とし穴のトシちゃん掘りに専念したいところ。
なのに
同室の滝夜叉丸に中断を迫られて
絶賛不機嫌中でーす
「喜八郎!ちょっとちょっと!」
「何?」
「とりあえず上がってきてくれ!」
「嫌だね、理由を言ってよ」
「お前の掘った落とし穴が崩れた!」
「…! 誰か掛かったの?」
ちょっと嬉しくなるが、僕は同室の言葉によりまたすぐに嫌な気持ちになる。
「いいや、妙なことに誰も通らなかったのに急に崩れたんだ!」
「それって、僕のトシちゃんに不備があったって事?」
「お前は天才的トラパーと異名を取る綾部喜八郎だ!いくら量産してるからってお前の落とし穴がこんなにヤワだとは私も思わない!だから妙だと言っているんだ!」
「じゃあやっぱり気付かなかっただけで誰か落ちたんじゃない?中は確認したの?」
「それが気味悪いからお前にしてもらおうと思ってだな!!」
「そー言うこと。滝も肝が小さいねぇ」
穴を這い出て滝夜叉丸の指さす方向を見ると、確かに僕のトシちゃん四号の足場がなく、ぽっかり穴が開いている。
穴の中を覗いてみると、薄暗くてハッキリはしないけれど生脚に脚絆、そして変わった
身につける衣服は一風変わっていて、舶来品のようだけど、南蛮のものとも天竺のものとも唐のものとも違うような感じだ。
顔は脚よりも下の方にあって見えない。
ま、一応お約束のアレを。
「だぁいせいこー」
「言ってる場合か!?って、誰も通ってないのに人が落ちているのか!?本当に!?」
「そんなに言うなら自分で見てみなよ」
滝夜叉丸は恐る恐る覗いてカッと目を見開いた。
「…だ、誰だ!?」
「分かんない。埋める?」
「待て待て!穴の底で気を失ってるみたいだし、先生方にご報告して指示を仰ごう」
「おー」
「誰に何の指示を仰ぐってー?」
偶然通りがかった七松先輩が滝の肩に手を添えながら穴を覗く。
「七松先輩!実は、誰も通ってないのに急に落とし穴の足場が崩れて、中を見たら珍妙な格好の人が…」
「ほんとだ!おーい、大丈夫かー!」
「いや何で起こそうとするんですか!?」
落ちた人?は七松先輩の呼びかけに反応して足がぴくりと動いた。
「どうした小平太、また喜八郎の掘った穴に誰か落ちたのか?」
大きな七松先輩の声で食満先輩も何事かとやって来た。
「そのようだぞ!」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時