其の参（八左ヱ門視点） ページ8
「……んぶっ…」
(まずい、起こしたか！？)
焦ってAから離れようとした。だが、ジュンコに気を取られていて毛先がAの顔にかかっていることに気付くのが一拍遅れてしまった。
俺の後頭部にAの手のひらが添えられ、引き寄せられた。
(な、なんなんだっ！？)
「んー……おか、みぃ……」
(オカ美と間違えてるのか！？)
いつも俺の髷はAによりオカ美の尾に喩えられてきた。どうやら今もそう思っているらしい。
狼にこんな事をすれば間違いなく噛みつかれるだろうし、髷が尾だとすればAが今抱えているのはオカ美の尻という事になるが、やはり半分夢の中の為、そういった点には気付かないようだ。
(それよりどうする、この状況……！)
後頭部に乗せられたままのAの手。そこから弱い電流でも流れているかのように甘く痺れて全身が不随意に震えた。
(なんかいい匂いするし、男の身体とは違って柔らかいし、変な気を起こしちまいそうだ)
このまま長期戦は諸々まずい。今は皆食堂へ詰めているだろうからいいが、食べ終わって昼寝に来た下級生に見られたら薄汚れた先輩とそしりを受けるかもしれない。六年の先輩方に見つかったら半殺しに遭うし、先生方に見つかったら社会的に死ぬ。
勿論、腕から抜け出すのは簡単なことだが、Aを起こさずにというのは容易ではない。途中で起きてしまったらそれこそ寝込みを襲ったと思われかねない。
「……はち、ざえもん…」
「え！？」
「……………………ぐぅ」
(今の、寝言……だよな？)
寝言で俺の名前を呼ぶって……。何それ、この状況で可愛いの上書きしてくんなよ！！というかどうして俺の名前が出てきたんだ……？
(まさか、俺の事を……す、好いている、とか)
思いついた一つの可能性に心ノ臓が煩いほど煽る。その鼓動でAを起こしてしまうんじゃないかと思う程だ。
「……んぁ……ふへ、ふふん」
突然、Aが奇声を発して身を捩る。その隙に俺はAの腕から無事脱することができた。
どうやら先に目覚めたジュンコが暇を持て余し、Aの首元を舐めて起こそうとしているらしい。
擽ったさに寝ていられなくなったAは、はたと目を覚ます。そしてすぐ横に俺が座って控えていることに気がついた。
「は……え、八左ヱ門」
「うん、おはよう…」
挨拶をしただけなのに、Aは何故だか急いで起き上がり、これ以上ないくらい顔を赤く染めた。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります！！ (2月4日 16時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください！！！！ (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月29日 15時
