蛇も木から落ちるの段 ページ6
生物小屋を後にして、行くあてもなく散歩する。
ここ半月ほどほぼ毎日生物小屋に行った。いつも八左ヱ門は私と話しながらてきぱき作業する。手伝いを買って出るが、何かを任されたことは一度もない。きっと私に託すよりも自分でした方が早いし楽なんだ。
「私に何かされることを望んでないのかもなぁ」
それなら八左ヱ門が他に何か思い付くまでゆっくり待つとしよう。急かしているように見えるといけないから、しばらくは生物小屋にも行かないようにして──…ん?
ふと木の枝にぶら下がる赤茶色の何かが目に入った。最初は帯か何かかと思ったが、それの正体が判明するのと落下し始めるのが同時だった。
「うわぁー!?待って待ってー!!!」
夢中で走った。落ちてきたそれを手だけで受け止める自信がなくて上衣の裾を袴から引っ張り出し、その小さな布面積を最大限広げて落下点へと入る。
「んべふっ!」
落ちて来たのは孫兵君の飼っているジュンコちゃんだ。上衣の裾で受け止めきれなかった彼女の尾が顔に当たってしまった。
ジュンコちゃんは怯えた顔をしていた。木の上には鷲がいて、私が抱え込むように隠すと、諦めてバッサバッサとその大きな翼で忍術学園の外へ飛んでいった。
「鷲に襲われてたんだね…大丈夫?怪我はない?」
「シャア…」
そっと地面に下ろして観察してみる。見たところ外傷はなさそうでほっと胸を撫で下ろす。
「あ、お話するのは初めてだよね。改めて私はAだよ。よろしくね」
って、蛇に普通に話しかけてしまった。恥ずかしい…。孫兵君がいつもやっているからつい。
「え、えーと。君のご主人のところへ送っていこうか?」
「シュル…」
もう怯えは落ち着いたようで、木の下でとぐろを巻いて目を瞑ってじっとしている。
「……もしかして眠いのかな?」
「シュー」
肯定するようにひと鳴きする。私の言葉に相槌を入れてくれるから、孫兵君が普通に話しかけるのもよく分かるなぁ。
隣へ寝そべってみる。木陰は日光が遮られて涼しいし、草地だから背中も柔らかい。上を向けば木漏れ日がキラキラと美しい。
ジュンコちゃんは私に近づくと、頬を細い舌でチロチロと舐めた。
「んふっ、擽ったいよ……んん?」
襟元から懐の中へ侵入する。そして向きを変えて顔だけピョコっと出すと、そのまま寝入ってしまった。
「甘えてるの?ふふ、可愛いねぇ…」
その温かさとちょうどいい重みに私も眠気を催した。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時