其の肆(半助視点) ページ40
「まさか私達を謀ろうとしていたとはな。きり丸、ちょっと来なさい」
「や〜これはその、僕の妄想って言うか?実行前なんでどうかお許しを〜!」
「いいから来なさい」
乱太郎としんべヱから離れたところまで連れて来ると、怒られるものと思ってしょげてしまったきり丸をそっと抱き締めた。
「ごめんな、私が独り身故に寂しい思いをさせて。お前は家族が欲しいんだもんな。嫁は積極的に探してみるから、Aに強く言って困らせるのはよしてくれないか?」
「……僕は家族が欲しいんじゃなくて、Aさんだから家族になって欲しかっただけです」
「きり丸……」
「余計なお世話だって分かってます。だけど園田村から帰ったくらいから竹谷先輩と親しくなり始めて、うんともすんともしない土井先生にやきもきして。立場上表立って行動出来ないなら、僕の我儘っていう体で行動すればいいやって…」
そうだったのか。私が積極的でなかったから、きり丸が気を揉んでこんな策を考えたんだな。
「長期の休みに入ったら、僕とAさんと土井先生で長屋へ帰り、町内会の決まり事や家の中のやるべき事を一通り説明して、それからすぐ休み明けまで福富屋に滞在するつもりでした。
その間土井先生とAさんにはゆっくり過ごしてもらって、もし休み明けにAさんが妊娠してたら儲けもんだなって」
「ちょっ、ちょっと待てきり丸。仮にそういう状況下に置かれるとして、私がAを襲うと思うか…!?」
「確率は半々くらいっすかねぇ。半助だけに?…いでっ!!」
拳骨をひとつ喰らわした。
「そんな事をしたら社会的に死ぬ。Aと一緒になれるかもしれないが、教師は続けられない。そもそも竹谷という存在がある時点でAをどうにかしようなどという選択肢は浮かばない。
だから私が積極的になるとしたら竹谷と破局した時だろうが、それも私は望んではいない」
きり丸は時々、無自覚に“自分さえ良ければ構わない”という思考に陥る。それは戦で家族を理不尽に奪われた経験があるからだろう。
学園内外できり丸の手癖は悪くない。元来この子は良い子なのだ。こうなったのはAの事について対話を怠った私の責任だ。
「理解するのは難しいか?」
「…いえ。土井先生には忍術学園の先生やって欲しいので、諦めます」
「ありがとう。ごめんな。冬休み私もアルバイト手伝うからな」
「約束っすよ。いっぱい受けますからね」
うん。今年の冬も頑張ろう。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時