其の伍(八左ヱ門視点) ページ33
「良かった…」
「八左ヱ門、何か言った?」
「やっ!何も!」
「ねえA、逢瀬の邪魔して悪いんだけど八左ヱ門ちょっとだけ借りていい?その間兵助と喋っててよ!」
突然、勘右衛門が何か思いついたように俺を引っ張る。
「ん?分かった!」
勘右衛門は自室に俺を押し込むと、明かりを灯す。
「な、何だよ?」
「八、お前さぁ、Aとどこまでいった?」
俺の肩に腕を乗せ、薄く笑って訊ねる。
「はあ!?藪から棒に何言ってるんだ!?」
「風呂上がりに毎晩あの場所で話してるでしょ。その時どんなことしたの?」
俺から離れると、押入れから敷き布団と掛け布団を一組分取り出し、三つ折りで畳まれたそれの上に足を組んで腰掛けた。
「どうしてお前に言わなきゃなんないんだよ?教える訳ないだろっ!?」
「どうしてって、もし手出してないんだったらAが不憫だな〜と思って。簪自分で挿せないって言うAに“良かった”だなんて呟いてるくらいだから、女心が分かってなさそうだし」
「も、もしかして俺が触れたいけどすっごく我慢してるのがAに伝わってて、幻滅されてるとか!?」
「ふうん、やっぱり何もしてないんだ?」
「わっ、笑いたいなら笑えよ!!俺はAを大事にしたいんだよ!!」
風呂上がりで寝巻き一枚のAが一人部屋の俺の部屋の前まで来てくれるのは、まさしく俺への信頼の現れだ。その信頼を裏切るなんてことはしたくない。
その為に今までもAを目の前にしてその頰や髪に触れてみたい、という気持ちが浮かんでは消しを繰り返した。
「大事にねえ?恋敵としての俺なら馬鹿だな〜って見物してたかもしれないけど、八はその前に友達だから、優しい勘ちゃんが教えてやるよ。
Aはお前のこと誘ってるんだよ」
「何ですと!?!?」
Aが!?俺を!?誘ってる!?
「髪なんかはくのたまが勝手にやったのかもしれないけど、Aの表情や仕草を見てる限りは焦れてる。本当に気付いてないの?」
「……正直、俺の触れたいって気持ちを気取らせないよう振る舞うのに必死で、気付けなかった」
「何で触れたいって気持ちを隠さなきゃいけないの?好きな子に触れたいって思うのは自然なことでしょ?八が我慢してたらAだって我慢しなきゃなんないじゃないか」
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時