其の肆(八左ヱ門視点) ページ32
「竹谷先輩、詳しくありがとうございました!」
「またいつでも訊きにおいで!」
「はい!では失礼します!
……あっ、Aさん!?すみません、竹谷先輩を長時間拘束してしまって!」
「ううん、今来たところだよ!」
しまった。
つい熱く語り過ぎてAを待たせてしまったかもと反省しながら戸口を出ると、いつもと違う、色っぽい雰囲気のAが乱太郎に微笑みかけていた。
(なっ、何だ…!?髪を上げてるのか…?)
髪をそんな風に結うAは初めて見た。
俺の心は一瞬で射抜かれた。
「それでは竹谷先輩、Aさん、おやすみなさい」
「おやすみ、乱太郎君」
しかしAは簪なんて持っていたのだろうか?
誰かから贈られたものだとしたら、心が小さいかもしれんが着けるのをやめさせたい。借り物だとしても、タカ丸さんが結ったとすれば、この風呂上がりのAに触れたということだ。それも嫌だ。昼間は構わないが風呂上がりはやめて欲しい。
「どうしたの?もう乱太郎君行っちゃったよ?」
ぼうっと思案に暮れる俺に訝しんだAが小首を傾げて問う。
「ああいや何でもない!ところで、今日は少し雰囲気が違うんだな?」
「うん!似合う?」
「とても!!」
こんな時、立花先輩ならすらすらと褒め言葉が出て来るんだろうな。あまりの良さにたった三文字しか出なかったけど、Aは満足そうに微笑んだ。
俺の恋人が最高に可愛い上に大人の色気も出せるなんて…!
今日はAに触れられずにいられるか不安だな…。
そんな不安をよそに、Aは五年長屋の廊下を歩いてきた兵助と勘右衛門に嬉しそうに手を振って愛想を振り撒く。
「やあA。今日はお団子にしているのかい?」
「そうだよ!似合う?」
「うん、似合ってる。Aってうなじ綺麗だよね」
「あ〜、俺これくらい緩く纏めてるの好きだなぁ!毎日これにしてよ!ねえ、ちょっと簪抜いてもいい?結ってるとこ見たい!」
「こら勘右衛門、八左ヱ門に悪いのだ」
「ああ、ごめんごめん!でも八もそう思わない?髪を纏めてるところ見たくない?女装時の後学の為にもさぁ」
「えっ!それは…!」
勘右衛門に完全同意だが、そんなの俺の我慢が続かないかもしれない。
「今日はくのたまちゃん達がしてくれたんだ。私不器用だから簪上手く挿せないと思う。教わってないし」
髪を結ったのはタカ丸さんじゃなかったんだ。簪もくのたまの私物だろうか。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時