もどかしい二人の段 ページ29
私達の仲が急展開を迎えた台風から早一週間。最近行かなくなっていた生物小屋にも再び顔を出すようになり、以前のような日々を送っていた。
そして新たに、毎晩お風呂上がりに八左ヱ門の部屋の前の縁側に座って二人でしばらく会話を楽しむのが私達の日課となりつつあった。
「……ふう。そろそろ寝るか」
「そうだね、おやすみ」
「今日もいっぱい喋れて楽しかったよ!また明日な!」
八左ヱ門は私の耳を塞いだあの時を最後に、私に指一本触れてこない。夜に話すのだって自らお開きにして、爽やかな笑顔で私を送り出す。
(…ほんの少し寂しいかな、なんてね)
これってもしや、
別にイチャイチャしたくて八左ヱ門の恋人になった訳ではないし、たまに触れるからとてもドキドキして燃え上がるものなのかも、と思ったりもするけれど。
だけど私、正直なところ、手を繋ぐくらいのことは日常的にしたい!それくらいなら望んでも構わないよね?
でも、八左ヱ門が望んでいなかったら?純粋に会話を楽しんでいる彼に変な風に思われたら?
“俺と付き合う前は色んな男侍らせてたもんな、そういう事がしたいんだ?はしたない女だな”
……いやいや、さすがに八左ヱ門はそこまで思わないだろうけど!侍らせてないけど!
だけど、今のままがずっと続くならば恋人である必要もないと思ってしまう。だって会話の内容も付き合う前と変わらない。あれから“好き”も言われてない。こちらからも言ってないけど…。
八左ヱ門は、恋人としての私に何を求めているんだろう?
すっきりしないまま数日が経過したある日の昼下がり、校庭の木にもたれながら思案していた私は一つの可能性に辿り着く。
「はっ!!私って、恋人らしいことをしたいと思えないくらい女としての魅力がないのかも…!?」
お風呂入った後だから匂いは大丈夫と思う…。髪もきちんと櫛を通して下の方で結っていたし、仕草も気を付けていたと思うんだけど…。あとはどこに気を付ければ!?
「悩めるAさん見ーっけ!」
「んぎゃ!!?」
木の裏側からくノ一教室のユキちゃん、トモミちゃん、おシゲちゃんが顔を出して私は驚愕のあまりひっくり返った。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時