竹谷の責務の段（八左ヱ門視点） ページ25
「竹谷八左ヱ門です。善法寺伊作先輩、いらっしゃいますか」
真っ暗で人気のない部屋に向かって訊ねる。すると、僅かばかりの沈黙の後、部屋の中で明かりが灯される。
「いいよ、入って」
「失礼します」
俺は緊張していた。普段の柔らかい雰囲気の伊作先輩からは想像できない恐ろしい形相の先輩を見たから。そして、Aの恋人として認めて貰えないのではないか、という心配があったから。
先輩の背後に明かりがあり、逆光になっていて顔に影を落としていて、俺の身体は強張った。
「何？」
「まず、僕の着替えを脱衣所まで持って来て頂いて、ありがとうございます。先輩に褌を持って来させるなんて、すみません」
「脱衣所までの道すがら、何度か包帯用に裂いてやろうかと思ったけどね」
「そ、そうなんですね…。
それから、Aの前で安易に外へ飛び出してすみません」
「あのね、何も僕はAちゃんだけを心配している訳じゃない。その場にAちゃんが居ても居なくても嵐の中外に出てはいけない。瓦が飛んで来てもおかしくないんだよ」
「はい、すみません。肝に銘じます……」
「竹谷。お前はAちゃんを幸せに出来るの？他の連中とは何が違う？」
「明日から、Aの安全と幸福を第一に考えて生きていきます。もしも僕の言動がAを不幸にすることがあれば僕のこと、如何様にもして下さい」
「命をも差し出すと言うの？」
「それくらいの覚悟です。Aは多くの人に好意を寄せられていました。その誰よりも幸せに出来なくてはいけないと……それが彼女の恋人としての責務だと思っています」
俺が話し終えると、先輩はふっと表情が柔らかくなった。
「Aちゃんが何故お前を選んだか、少し理解出来た気がするよ。
あの子は我が身の危険を顧みないところがある。不死身疑惑が出たから尚更だ。保健委員長として頼む。彼女が彼女らしく心身共に健やかであれるように、一番近くで導いてやって欲しい」
そう言って、俺に頭を下げるものだから、俺もそれ以上深く頭を下げた。
「や、やめて下さい！頭を下げなきゃいけないのは僕の方で──」
「宜しく」
こちらに背を向け、話は終わりだと言わんばかりに布を裂いて包帯巻きを始めた。
「いつまでそこに居るの？お前の褌も裂くよ」
「……失礼します」
ともすれば逆の立場だったかもしれないと思うと、先輩の気持ちが痛いほど身に沁みた。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります！！ (2月4日 16時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください！！！！ (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月29日 15時
