其の弐 ページ20
「はぁ〜〜〜〜極楽、極楽……」
「だなぁ〜〜…」
掛け湯で入念に温度に慣らしてから湯船に浸かる。それでも体表温度と湯温の差が激しくて火傷するんじゃないかと思ったほど。だけど一度肩まで浸かってしまえば気分は最高。
湯の中で
「あ、ごめん」
「はは、何やってんだよ」
「服着てお風呂入るなんてないから楽しくって」
「確かに、俺も十四年生きてきて風呂は初めてだなぁ。川や池なんかは時々あるけど」
「それは忍者のたまごだから？」
「そ！時には城のお堀を泳いだり、水の中で身を潜めなきゃならない時もあるからな！」
「格好いい〜！忍者って何でもするんだね」
「うん。俺も更に頑張ってAに格好いいって思われる忍者にならんとなぁ〜」
「きっとなれるよ。今日だって一人で生物小屋を守ってる背中は格好よかったよ」
「えっ、そ、そう…！？いやぁ、照れるな……」
その太くて黒々とした凛々しい眉を穏やかに下げて緩みきっている。何だろう、温泉に入るカピバラを見ているようで癒されるなぁ。
「…俺の顔に何か付いてる？」
「いや、脱力した八左ヱ門は初めて見るような気がして」
「わ、悪い……幻滅した？」
「そんなんで幻滅する訳ないでしょ！
八左ヱ門はいつも頑張っていたから、今までそんな緩みきった顔はほとんど見せてこなかったんだろうなぁ」
「……Aにもあるのか？誰にも見せたことない顔」
「ん？どうだろう。私普段からこんな感じだし、そういうのはないかも」
「俺だけしか知らないAが見てみたい」
急に真剣な表情になった八左ヱ門が身体をこちらに向けた。
八左ヱ門の指が顔の前に伸びてきて、私の心臓はどくどくと高鳴った。しかし頬に触れる寸前で動きが止まり、さっと引っ込んだ。その拍子にばしゃんと水音が立ち、場の緊張が途切れる。
「…あ〜…ごめん！さっき恋仲になったばっかりなのに、さすがに気が早いよな！今のは忘れて！
俺、もう温まったから先に着替えて戻ってるからっ！！」
「あっ、八左ヱ門…」
慌てて風呂場を出て行ってしまった。
恐らくあの空気感、八左ヱ門は接吻しようとしてたんだと思う。今までに何度か接吻やそれに近しい事をして来られたから何となく分かる。
(……しても、よかったのにな)
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります！！ (2月4日 16時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください！！！！ (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月29日 15時
