其の肆（八左ヱ門視点） ページ18
はぁ、夢心地だ。全然実感湧かないけど寒さ故に見た幻想とかじゃないよな。
「は、八左ヱ門…」
腕の中のAが居心地悪そうに身体を捩る。
えっ、まさかここまで喜ばせておいてやっぱりやめるなんて言わないよな！？
「どっ、どうした！？」
「見られてる…」
俺の肩越しに何かを見て突然真っ赤になって俯いた。はっとして振り向くと、そこには食満留三郎先輩と善法寺伊作先輩がいらっしゃったので俺はAから弾けるように離れた。
「うわっ！？食満先輩に伊作先輩！？いつからそこに！？」
「台風の目に入った時からかな」
「台風の目…？」
そういえば、あれだけ激しかった雨風がいつの間にか止んでいた。途中からそれどころじゃなくて天候の変化に全然気がつかなかった…！
「暴風雨が止んだんで様子見に外へ出ようとしたら一平に竹谷、お前が生物小屋に向かったことを報告受けたんでな。まさかAまでいると思わなかったが。しかも恋仲になっているし」
食満先輩は大工道具と修補用木材を手にしている。ありがたい。一方、伊作先輩の方はAの腕を取ると、あのいつも穏やかな先輩が厳しい形相でAを叱りつける。
「こんなに身体冷やして馬鹿なの？死にたいの？」
「ご、ごめんなさい！……ひゃっ！？」
Aを抱き上げ、キッと強い視線をこちらへと寄越す。
「竹谷。Aちゃんをこんな危険な目に遭わせるなんて、この先が思いやられるよ。間違っても毒虫を近付けたりしないでよね」
「す、すいません…」
「違うよ！八左ヱ門は私に部屋で待ってろって言ったんだよ、だけど私が勝手に出てきたの」
「竹谷を追って外へ出たんでしょ。Aちゃんの性格を知ってる訳だし、そうなることは容易に想像できてたでしょ。できてなきゃいけない」
「伊作、お前恋破れたからって僻み過ぎだぞ」
「別にどう捉えてもらっても構わないけど。
僕が竹谷の立場だったらAちゃんを外には出させないし、自分も外に出ない。生物小屋にいるのは主に蛇と狼だろ？元は野生だったんだから台風の雨風くらいどうってことないよ。僕は竹谷の判断を評価しない」
「絶対私怨入ってるだろ…」
伊作先輩は辛口評価だけど、確かにその通りかもな。Aが追ってくるかもってことはちゃんと考えたら想定できた。
俺はどれだけ叱られても構わないけど、あんまり俺を叱るとAが申し訳なさそうに小さくなってゆくのが可哀想だから程々にして欲しい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 67人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります！！ (2月4日 16時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください！！！！ (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月29日 15時
