台風襲来の段 ページ13
「はぁ……」
虎若君の溜息が雨の叩きつける音に溶けてゆく。
連休に照星さんと舳丸さんが忍術学園に来られる予定は無くなってしまった。台風が直撃したのだ。
昨日はやや強い風が吹く中、台風対策で用具委員会は大忙しだった。私や他の上級生を動員しても人手が足らず、猫の手も借りたい状態で色々な箇所を補強したりとてんてこ舞いだった。
今日はあちらこちらで雨漏りがして、用具委員会は桶を持って東奔西走している。私もその手伝いで桶を持って見廻っていたところ、食堂で溜息を吐く虎若君を見つけたのだ。
「残念だったね、虎若君」
「はい……」
「きっと、また教えて貰える機会があるよ」
「そうですね。もしAさんと照星さんがご結婚なさったら、僕の大好きなお二人がずっと佐武村に居てくださるし。今回はそう言う意味でもお二人に仲を深めて頂くいい機会だったのに…」
(うっ…)
虎若君の期待が両肩にのしかかる。ここ最近は虎若君の口から照星さんの名前を聞くのが辛くなってきた。
照星さん、いい方なのは間違いないのだけど……。
十六歳はこの時代では適齢期。令和の世でも最近までは十六歳から結婚できたし、別におかしなことではない。だけど、私にはまだ早いと感じてしまう。
私が結婚を考えだした頃には照星さんは立派なおじさんに……いや、彼もそこまで私のこと待ってないかもしれないけど。
一際強く風が吹いて、ドゴンと何か大きくて硬い物が雨戸に衝突した音がする。
「何だろう…」
「どこかから何か飛んできたんでしょうね。よくある事です」
「ちょっと見てくるね」
音に気付いた下級生数人が集まっていた。
五寸ほど開けてみると、それだけで猛烈な雨風が廊下に吹き抜けた。そして地面に視線を移すと、戸が一枚落ちている。
「これ……！」
「生物小屋の戸だ！」
特徴的な格子と風向きから見て生物小屋のものであることは間違いなかった。
「じゃあ今頃生物達は…！？」
「雨風に晒されてるかもしれないね…！」
「僕、竹谷先輩に報せてきます！」
生物委員会の一平君が走っていった。
生物小屋ももちろん台風対策は行った。けれど、この猛烈な風には耐えられなかったみたいだ。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります！！ (2月4日 16時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください！！！！ (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月29日 15時
