水軍の刺客の段 ページ11
「竹谷先輩、お騒がせしました。Aさん、ジュンコの危機を救って頂きありがとうございました」
「お役に立てて良かったよ。ジュンコちゃんまたね」
「お前も早く昼飯食えよ」
「はい!」
二人で孫兵君とジュンコちゃんを見送った後、私のお腹の虫が鳴く。たぶん小さい音だったから八左ヱ門には聞かれていないと思う。
「八左ヱ門はもうお昼食べた?」
「いや、まだだけど」
「じゃあ一緒に食べよっ!」
「おう!あー腹減った!」
ジュンコちゃん騒動で時間がずれたにもかかわらず、食堂は混んでいた。唯一空いているのが三郎次君と左近君の隣で、ぎりぎりふた席。
「はい、お待ちどおさま。Aちゃん、良かったわねぇ」
「ほわあああ!これは、蛸の酢の物じゃないですか…!!」
いつも小鉢は一つなのに、今日は二つ。切り干し大根の横で美しい紅色の蛸が彩りを添えてくれている…!
「さっき兵庫水軍の方がいらしてね、蛸をたくさん頂いたから小鉢がひとつ増えたのよ」
「えっ、そうなんですか!?今どちらに?」
「お茶でもお出ししようと思ったんだけど、すぐ終わる用事で来たからって。さすがにもう帰っちゃったんじゃないかしら」
「そうですか…」
「あらあら、残念そうね。そういえばその人、Aちゃんに挨拶したかったけど見つけられなかったって言ってたわよ」
誰が来てたんだろう?久しぶりに会いたかったなぁ。蛸のお礼もしたかった。
八左ヱ門が三郎次君の隣に座ったので、私は左近君の隣に座る。
いつもより丁寧にいただきますをして蛸を頬張ればほらもう幸せ。
「Aの顔、緩みきってるなぁ!俺のもやるよ」
「えっ!!いいの!?蛸に関しては遠慮しないよ!?」
「うん、Aのその顔見れたら満足だよ」
「わああ……!ありがとう八左ヱ門大好き!!お礼にとんかつ一切れどうぞ!!」
「!?…お……おお」
八左ヱ門は目を見開いた。
「どしたの?」
「いや、気にしないでくれ!俺は大丈夫だから……とんかつありがとな」
手拭いで顔を覆ってしまった。くしゃみでも出そうだったのかな?
「…Aさん」
そこで声を掛けてきたのは隣の左近君。どうしてそんな怖い顔して私を見るの?
「何…?」
「保健委員の僕の前で竹谷先輩と浮気するおつもりですか?」
「え?……はっ!?」
そうだった。園田村でお堂の夜間警備をした日、伊作君と恋仲のふりをしたの忘れてた!!
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時