変化と悩みの段(八左ヱ門視点) ページ2
九月も終わりに差し掛かり、間もなく園田村の戦から一月を数えようとしている。あれから忍術学園は大きな出来事もなく平和な日常を送っていた。
園田村の一件を終え、変化したことが二つある。
一つは、Aの笑顔が増えたこと。
タソガレドキ忍軍組頭の雑渡昆奈門から狙われなくなり、心から安心して過ごせているようだ。
もう一つは、そのAが頻繁に生物小屋に来るようになったことだ。もちろん俺に会いに──
「や〜〜今日も相変わらず格好いいね!!」
──ではなく、飼育している狼のオカ美を見に、だ。
Aは話し相手が誰も居ない時でも平気で檻越しに眺めているので、オカ美を第一目的に来ていることは間違いないのだ。
欲を言えば“俺と話したいから”という下心を持っていて欲しいとは思いつつ、生物を慕ってくれるその純粋な気持ちもまた、生物委員会委員長代理としては喜ばしい限りであり、要はAの用向きが何であっても通ってくれていることが嬉しいのだ。
「もうすぐ秋だってのに、まだ暑っちいな」
「そうだねぇ。八左ヱ門の髷はモサモサだから余計暑そう」
「そうなんだよなー。俺の髪も夏毛と冬毛で生え変わればいいのに」
「夏毛かあ…。根元までバッサリと短く切ればいいんじゃない?」
「それはさすがに格好悪いだろ」
「へー、ボサボサ髪でも長さは気にするんだね」
「なんていうかさ、髷を結わないのは人生の脱落者みたいな感じがしないか?坊さんは特殊だけど」
「いやぁ、私のいた時代では特に男の人は短髪の人がほとんどだから何とも思わないなぁ。むしろサッパリしてて好印象!て感じだけど」
「そうなのか!?それが普通なら楽だろうな〜」
と言いつつ、気になるのは俺の髷の印象。短髪が好印象なら、俺の髷はサッパリとは真逆。暑苦しいとか、傷んで見た目も汚いとか思われているんだろうか……。
おまけに、Aは生物小屋に来ても愛でるのは哺乳類ばかりで虫達はからっきし興味がない様子。兵助によると嫌いだとか。俺が虫を髷の中で越冬させると知ったら、俺は避けられてしまうんだろうか……。
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります!! (2月4日 16時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください!!!! (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月29日 15時