同衾の段 ページ8
「よし、完了!」
服やら褌やらが散らかり放題だった清八さんの部屋はひとまず小綺麗になった。溜まった洗濯物もやっつけたいけど、もう陽が落ちたからそれは明日以降だ。
褌を触られるのは恥ずかしがっていたけれど、山田先生や兵庫水軍の海賊さんので触り慣れている。清八さんのももちろん私は気にしない。
「ありがとうございます!お陰ですっかり綺麗になりました!」
「いえいえ!お役に立てて良かったです!洗濯はまた明日やりますね」
「洗濯までしてくれるんですか!?」
「何なら加藤村を出るまで毎日しますよ」
「本当ですか!?洗濯苦手なので甘えてもいいですか?」
「はい!恩返しさせて下さい!
それでは今日はそろそろお暇しますね」
「あ………あの」
「はい?」
「親方の家では一人部屋で休まれていますか?」
「そうですね、一人ですけど」
「一人で寝るの、怖くないですか?」
「えっ?」
「今日あんな事があったし怖いですよね。此処で一緒に寝ますか?」
「!?」
清八さん、どうも冗談で言っているようではなさそうだ。
「変な事を言ってすみません、でも一人にしたくなくて。今度こそあなたを失ってしまいそうで、私も怖いんです」
清八さんの視線が熱を帯びる。こんな清八さんの顔、見たことない。
「一緒に、寝てくれませんか…?」
「い、いや…それはちょっと…。私、寝相には悪評がありまして…」
「誰がそんなことを言うんですか?」
「忍た──」
「忍たま?」
「…いや、何でもないです」
◆
どうしよう。断りきれなくて一緒の布団に入ってしまったけど…。
清八さん早く寝入ってくれないかな。そうしたらそっと抜け出して加藤邸に戻ろう。
もう真っ暗だ。こんな暗くて加藤邸まで戻れるかな?
虫の音と清八さんの息遣いだけが聞こえる。
背中にすごく清八さんの温もりを感じる。夏だから寝苦しいな…。
「…さっきのタソガレドキの…」
「…雑渡昆奈門ですか?」
「そう。その人が言っていた“あの晩の続き”って、何されたんですか?」
「聞こえてたんですか?」
「敢えて私に聞かせたんだと思います」
あの夜は、布団に引き摺り込まれて、後ろから胸を鷲掴みにされて…たまたま位置関係が今の状況と似ている…
「話すのは勘弁してもらえませんか…?」
「口に出すのも憚られるほど酷い事をされたんですか」
「そういう訳ではないんですけどね!?」
「だったら、教えて下さい」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時