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其の参 ページ34

「そうやって見目の良さと涙を武器として使い、籠絡して来たのか?残念だが私にそんなちゃち(・・・)(はかりごと)は通じんぞ」


大粒の涙が重力に逆らえきれずに溢れた。
お世話になる身として意見することに引け目を感じていたけれど、私はもう我慢しない。


「誰の差金だ?正直に言えば村から生かして出してやる。但し条件として金輪際佐武村や忍たまに近付かない事──」


「いい加減にして下さい!!!」


自分でも驚くほど大きな声が出た。照星さんも僅かに目を見開いた。


「私のこと荒唐無稽だとか法螺吹きだとか言ってますけど、現に未来から飛ばされて来ちゃったんだからどうしようもないでしょうが!!!」


岩から立ち上がり、照星さんへ詰め寄る。


「私を疑うのは自由ですけど、圧をかけるのも別に構いませんけどね、私は事実しか言ってませんから!!くノ一でも何でもないのにどうしろって言うんですか!?
と言うか戦国時代で生きてかなきゃなんないならむしろあなたの言う凄腕のくノ一に生まれたかったわ!!!!」


ぼろぼろと涙が溢れた。悔しいな。こう言うのは泣かずに毅然とした態度で決めたいのに。


「くノ一でない証拠?んなもんないわ!!じゃあアンタが先に佐武村に弓引く存在でない事を証明してみせろや!!こう言うの“悪魔の証明”って言うんだよくそ野郎!!」


照星さんの胸倉を掴んで叫び散らしてやった。
もう後には退けない。悪かったと思うなら謝罪があるかもしれない。でも私の態度に怒った照星さんに滝壺に沈められるかもしれない。


「……………………。」


だが、僅かに目を見開いたまま表情を変えず、何の発言もない。想定外の反応に過熱した私の頭は少しずつ冷静さを取り戻してゆく。


「…もういいです…お望み通り村から出ます。行李を運ぶのに大きな風呂敷を一枚貸して下さい。清八さんが来たら加藤村へ帰して下さい。それから──」


「待て。確かに私も佐武衆に対して叛意(はんい)がない事、証明する術がない。よって私にお前を追い出す事は出来ない」


「それでも出て行きます。汚い啖呵切った後で佐武村へ戻れるほど神経図太くないんで」


私の手首を掴んだ。掴まれた手首から照星さんの顔に視線を移すと、彼の双眸(そうぼう)は余裕なさげに揺れていた。


「…………悪かった……」

其の肆→←其の弍(照星視点)



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設定タグ:忍たま , 照星 , 清八   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時

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