其の伍(八左ヱ門視点) ページ31
「八左ヱ門の髷、オカ美の尻尾五つ分くらいあるもんね」
「五つはさすがに言い過ぎだろう!?」
「そうかな?でもフッサフサ」
「うちは代々フッサフサだから禿げないんだぜ!」
「禿げ…!? ふふっ!それは良かったね!」
ああ、やっと笑ってくれたなあ。まさか禿げという単語で笑うとは思わなかったけど、虎若が笑わないって心配してたから良かった良かった。
「じゃあ八左ヱ門のお父上もフッサフサ?」
「フッサフサ!兄ちゃんも爺ちゃんも!」
「ふふ。ちょっと見てみたいかも」
「…今度、紹介するよ…!」
「うん、機会があったら」
親兄弟にAを紹介する機会、あればいいなぁ。
「……あ!一つ聞いてもいい?八左ヱ門のお兄さんって、兵庫水軍に居たりする…!?」
「いや、居ないけど?」
「そっか、やっぱり他人のそら似だったんだ〜」
「そんなに俺と似た人が居たの?」
「うん、しかもね優しいところもそっくりなの。厄除けの首飾りも贈ってくださって。ほら」
海のような色の天然石の首飾りを俺に見せた。
俺に似た男がAに装飾品の贈り物か〜〜。
「これを見る度に贈ってくださった白南風丸さんと八左ヱ門を思い出すんだ。だから今日も八左ヱ門のこと元気かなぁって思ってたんだけど、まさか会えるなんてね」
「へえ、そうかあ」
仮に俺が贈り物してもその海賊さんのことも思い出すって事か?う〜〜ん。こりゃお互い複雑。
「っと、談笑しているバヤイじゃない。心配してた虎若にAがちょっと元気を取り戻したこと言ってやらんと」
虎若は話の聞こえない距離に立っていた。俺が障子を開けたのを確認すると、すぐ走り寄ってきた。
「お話終わりましたか!?」
「ああ、待たせて悪かったな!」
「Aさんは…」
先程よりも断然柔らかな表情をしたAが虎若に歩み寄り、頭を撫でた。
「ありがとう、虎若君。君が連れて来てくれた八左ヱ門にすっかり慰められちゃった」
「…よ、よ、良がっだぁ…笑ってるぅ…!」
「ごめんね、たくさん心配かけちゃったね…」
「Aさんが、元気になったならいいです…!竹谷先輩を連れて来た僕の判断は間違ってなかった!」
「うん、八左ヱ門に会わせてくれてありがとう!」
「竹谷先輩、来てくれてありがとうございます!」
俺の方こそ礼を言いたい。
虎若、薬師より俺を選んで連れて来てくれてありがとう。
A、俺の慰めで元気になってくれてありがとう。
58人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時