其の弍(八左ヱ門視点) ページ28
「その連れ去りの日時が迫っていて、元気を無くしているかもしれないって事か…!?」
「分かりませんが…僕には何も出来なくて」
「事情は分かった!虎若、一人で悩んで不安だったな。Aは俺が何とかするから安心しろ!!」
「…!! ありがとうございますっ!!
やっぱり竹谷先輩にお話しして良かったぁあ!!」
虎若は今にも泣き出しそうだ。Aの事、一人で抱え込んでいっぱい心配したんだな。優しい子だ。
「若太夫、その方は…!?」
「うん、僕の先輩!」
「すみません、お邪魔しますっ!」
薬師を連れて来る筈が忍術学園の先輩を連れて来たので門兵は訝しんだ。馬を止めずに砦を通り過ぎたから馬上からの挨拶になったけど、大丈夫かな?
虎若はAのところへ行く前にどうしても見せたいとの事で、団蔵からの文を持って来た。
「これ、もしかして忍者文字か…!?団蔵、よくこんな長文で書いたな。それに虎若もよく解読したな!」
「解読は照星さんに手伝ってもらったので!これが解読した文章です!」
「……………。 内容は分かった。Aが心配だから早く行こう!」
一つの部屋の前で歩みを止めた。虎若と目が合うと、二人で頷いた。
「Aさん、起きてますか?入ってもいいですか?」
「どうぞ」と小さな声で返事があった。
「A、入るぞ」
声を掛けると、布団に横たわったAの虚ろな目が俺を捉えた。そしてみるみる目が見開かれた。
「八左ヱ門…!?」
「久しぶりだな!さっき虎若と偶然町で会ってさ。Aが元気ないって言うから薬師の代わりに飛んで来たんだ」
Aが布団から起き上がろうとしたので手を添えて手伝ってやると、突然Aが俺の首に腕を回して抱き付いた。
「おほッ!?」
驚きつつもAを抱き締め返す。以前より少し痩せたような気がする。
「ははっどうした!そんなに俺に会いたかったか!?」
「うん…」
「よしよし、何か悩み事でもあったか?」
「…………。」
そんなすぐには喋らないか。
「少し痩せたか?ご飯食べられないのか?」
「次から食べる」
「おっ、そりゃ良かった!約束な!」
返事の代わりに抱き付く力が強まった。これは相当精神的に参ってるかもしれないな。
「虎若、ちょっと二人にしてくれないか?」
「え…はい、分かりました」
虎若が退室して、辺りに人の気配がなくなったのを見計らい、あの話をしてみた。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時