団蔵の文の段(清八視点) ページ18
「虎、今日は馬借の彼も泊まってゆく。白馬を
ご自分の馬を部下に預け、兜を脱いで虎若さんに指示をした。
「分かった!Aさんはここで少し待っていて下さい。清八さん、こちらです!」
Aさんの足元に行李を二つ置き、私達だけ厩舎へ向かった。厩舎にはその部下と虎若さん、私、照星さんの四人だけとなった。
「この馬房が空いているので使って下さい!」
「ありがとうございます、お借りします」
「コレステロール、久しぶりだね!」
「スン…」
「あれ…お前のこと助平な顔してるって言ったこと、根に持ってる?」
「ブスン」
「あはは…ごめんよ」
「虎若さん、これ。若旦那からです」
若旦那から託された文を手渡すと、宛名を見て虎若さんは驚いた。
「団蔵の字が上手くなってる!?」
「毎日Aさんが特訓していましたからね」
「へー、団蔵の字を上達させるなんてAさん凄いや〜…ほげげーっ!?」
中を確認すると、更に驚いた。
「しょ、照星さん、これ…何ですか…!?」
呼ばれた照星さんが書状を覗き込む。すると彼は目を細めて苦々しい顔をした。
「…これは…忍者文字のようだが、こうも汚いと…」
若旦那の字がましになったとは言え、まだ汚いのだろう。忍者文字で暗号化された文字が更に難解になっているようだ。
「お願いします照星さん!この後一緒に解読して下さい!」
照星さんは確認するように私をちらりと見た。
「しかし、私は読まない方が良さそうだ」
「ええっ、そうなんですか!?」
「清八君、だったかな。文の内容はあの女子にも見せない方がよいのかね?」
「本人に伝えて良いものかどうかは、虎若さんのご判断になるかと。
元はAさんが兵庫水軍に滞在中、忍術学園の久々知さんが若旦那──加藤団蔵宛に認めたもので、Aさんの前で渡さないようにと言われました。
その内容の申し送りと、追加で先日加藤村であった出来事が記されているものと思います」
「どうして久々知先輩が!?先輩も団蔵に忍者文字で書いたんですか?」
「そのようですよ」
「じゃあ団蔵は一人で忍者文字を解読したのかぁ〜…うーん…悔しいけど、一人で解読してたら読めた頃にはAさんはこの村を去っているかも…」
虎若さんは照星さんと私をチラチラと横目で見た。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時