その男、照星の段 ページ16
パァン、と離れたところから破裂音がした。それとほぼ同時に山賊の一人が叫び声を上げて倒れ込んだ。山賊の腕から血がどくどくと流れる。
「だ、誰だ!?」
離れた場所に硝煙がもうもうと立っている。その中で青毛の騎馬が一騎、こちらに銃口を向けていた。
※青毛…馬の最も黒い毛色
「さ、佐武だァ!!」
「奴ら、遠征に行ったんじゃなかったのか!?」
私を突き放して慌てて林の奥へと逃げ去っていった。清八さんが駆け寄って助け起こしてくれた。
「Aさんッ!!」
「せ、清八さん…!」
「あなたは…この短期間に二度も連れ去られそうになって…!!今度こそ、どうしようかと思いましたよ…!!」
痛いほど、強く抱き締められた。清八さんの焦りが触れた部分から感じられるようだ。
「二人共、怪我はないか」
青毛の将が
「…はい…危ないところをお助け頂き、ありがとうございました…!」
私と清八さんは地面に座ったまま頭を下げた。
「馬借と女子…。そなたが佐武村に滞在するという…?」
「はい、Aと申します。…という事は、佐武村の方でいらっしゃいますか?」
「…まあ、客分ではあるが。野外演習の帰り、賊に襲われる君達が見えて昌義殿がもしやと仰っていたが、間に合ったようで良かった」
墨黒の忍装束を着ており、肌は対照的に透き通るような白さで、
「照星殿、その者達は大事ないか?」
その人は照星というらしい。
甲冑を身に付けた人を何人も引き連れて、男性が追いついてきた。その男性もまた甲冑、そして兜を被り、さながら小さな軍勢だ。
「ええ。やはり件の忍術学園の女子のようです」
「馬上からで悪いな。わしは佐武昌義だ」
「Aと申します。二週間弱、お世話になります」
「うむ。ところで、とっくに村へ着いている頃と思っておったが」
「土砂降りにより地滑りや川の増水が懸念されたため、迂回して参りましたので到着が遅れてしまいました」
馬借の責任として、清八さんがしっかりとした説明を行った。
「成程、それでその馬は疲弊しているのだな。今から近江に帰るのは無理だ。馬借のお主も今夜は村へ泊まってゆくと良い」
「あ…ありがとうございます!」
良かった。清八さんはこんな夕方からどうするのだろうと心配だったから一安心だ。
58人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時