其の弍(清八視点) ページ15
「銭?幾ら持ってるか見せてみやがれ」
Aさんは懐から銭袋を出して、それを振って音を聞かせてみせた。
「音からして額は大したことねェが…そうだな、俺達は親切だから、その銭と女を渡すなら、馬とお前は逃してやる」
「そんなもの、到底承服できない!コレステロールもAさんも渡さない…!」
「じゃあお前をただの肉片にしてから女も馬も両方奪ってやるよ!覚悟しな!」
「待って下さい!!私が銭を持ってそちらへ行けば、本当にこの人と馬の安全は担保してくれるのですね!?」
「おう、物分かりのいい女だなァ。約束してやるよ」
Aさんの腕を掴んだ。
「駄目ですAさん!!そんな真似絶対いけませんッ!!」
「清八さん、落ち着いて下さい!私達には武器がありません。このままでは清八さんは殺され、私とコレステロールは売られてしまうでしょう。より可能性のある方に賭けましょう…!」
Aさんの言うことは
だが、Aさんは一見冷静に話しているようで、冷や汗をかいて震えているのだ。こんなに怖がっているのに、黙って行かせていいのか!?そんな事で若旦那に顔向けできるのか!?
「…いいや、絶対に行かせない!!」
「馬借と馬が離れ離れになってはいけません!」
「揉めてるんだったら、男は殺しちまうぞ」
火事場の馬鹿力というやつだろうか。Aさんは私の強く掴んだ手を振り払った。はずみで二、三歩下がり、そのまま背中が山賊の懐に当たり、流れるように山賊の手に渡ってしまった。
「Aさんッ!!!!」
こういう時に限ってタソガレドキのあの男はいない。コレステロールも暴れかけたが、刀の切先を鼻先に突き出され、恐れ
「大丈夫です!上手くやりますからっ!」
何が“大丈夫”ですか、今にも泣きそうな顔して。
今のあなたの顔、私がタソガレドキの男と対峙した時と同じ、不安で堪らない時の顔ですよ。
「馬借のお前!ついてくるなよ!ついて来たらお前も女も殺す!」
切先をこちらに向け、後退りで林の中へ入ってゆく山賊。
ああ、戦えなくてすみません。女性に助けられる不甲斐ない男ですみません…!
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時