山賊現るの段(清八視点) ページ14
土砂降りに近かったので、山道や川の付近は増水や地滑りなどで安全に通行できない可能性もあり、懸念される箇所は迂回して向かった。
結果、朝一番で加藤村を出た筈が、佐武村を視界に捉えたのは調子の良いコレステロールの脚でも夕方になってしまった。
「見えましたよ!」
「あれが、佐武村…」
視界に入ったと言えどもまだしばらくは走らなければならない。しかしコレステロールは疲れてしまったようで、走るのをやめてしまった。
「コレステロール、もう少しなんだけど頑張れないか?」
「いいですいいです!私歩きますから!随分遠回りして走って来てくれたもんね。ありがとう!」
私が先に降りて、Aさんを抱きかかえて地面へ降ろす。彼女は久しぶりの地面なので少しよろめいてしまった。
「わっ、とと」
「大丈夫ですか?疲れましたよね?」
「あはは、正直言うと。でもコレステロールや清八さんに比べたら全然…。本当にこんな遠くまですみません」
「大丈夫です!私はAさんと遠乗り出来て楽しかったですから。コレステロールだってそうですよ」
「私も!今日一緒に来て下さったのがコレステロールと清八さんで本当に良かったです!
ありがとうね、コレステロール!」
「ブヒィ!」
愛情持ってコレステロールを撫でるAさん。馬にも思いやりを持って接してくれるし、やっぱり私はAさんの事が好きだなぁ。
「Aさん…」
「はい?」
「私、Aさんの事が──…」
「おい、そこの連中!」
ざんばら髪の男が三人、林の中から姿を現して行手を阻む。ぼろぼろの甲冑を身に付けるなど、身なりは
「命が惜しかったらその馬置いて行きな!」
(山賊だ…!)
コレステロールの前へ出る。
「コレステロールは渡さない!」
「これ、捨てる?…随分変な名前の馬だなァ。大人しく渡さねェと、たたっ斬るぞ!」
男達は抜刀した。碌な手入れもしていないのか、その刀身は曇っていた。
「これは斬れ味が悪いからな、斬るってより
どうする!?相手は武器を持った男三人、こちらは武器無しでコレステロールを護らなきゃいけない。
「お願い致します、銭をお支払いしますから、どうか馬は見逃して下さい…!」
Aさんが私の前に出て頭を下げた。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時