其の弍(守一郎視点) ページ7
「まあ、気持ちは分からんでもないが」
「だろう!?」
Aさんとは、学園に来られた翌日に部屋の戸の修補でお話をしたのが最初だ。会話が弾んで、友達一号になった。
一号とは単に友達になった順なだけで、特別多く話したりということはなかった。それに三木ヱ門が、『一号は潮江先輩だ』と言っていた。本人がそう伝えろと言っていたと。
だから俺はAさんにとって特別感のないその他大勢だった。
「とにかく、守一郎もAさんに謝罪しろ」
けど俺は、彼女を見かければ目で追ったし、忍たまと話していれば何の話をしているのか気になった。
たまに二人きりで話せれば、気持ちが高揚した。
「おい、守一郎聞いているのか!?」
これがAさんといる時特有のものだと気付いたのはごく最近のこと。
俺はずっと一人で籠城していて、女の子と話した記憶なんてほとんどない。だから免疫がなくて慣れていないだけだって思っていた。
だけど今日、上衣を脱いだAさんを見て気付いてしまった。
この【いつもと違うAさん】を、誰の目にも触れさせたくないという気持ち。しんべヱが、食満先輩とAさんをお似合いだと言った時には、身を焦がすような胸の痛み。
これを恋と言わず、何と言うのだろう。
「いい加減にしろ!元はと言えばお前が過剰に気にしたのが悪いんだろ!」
三木ヱ門が俺の頭を強引に下げさせた。
「三木、別に私は気にしてないからさ…」
「Aさん」
「うん?」
「俺は鈍感なので、気付くのに時間が掛かってしまいましたが、Aさんの事が好きです」
「っはぁ!?」
今度は首根っこを掴んで頭を上げさせた。
「お前なあ!そんな話を第三者がいる前でするなよ!!」
「俺は別に三木ヱ門になら聞かれてもいいし…」
「私が困るんだよ!!気を遣えよこの鈍感!!」
俺達が言い争うので(三木ヱ門が一方的に突っかかってるだけだけど)、当人は返事どころではなくオロオロしながらも間に割って入って仲裁した。
「ちょ、ちょっと落ち着こう、ね」
明らかにAさんは困った顔をした。これは色よい返事は期待出来ない。分かっていたことだけど。
「浜君、気持ちはすごく嬉しい。けど…」
「言わないで下さい!俺がただ伝えたかっただけなんで。今言いかけた返事、絶対変えさせてみせますから!!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時