其の参(蜉蝣視点) ページ46
「今助けます、落ち着いて下さい」
中途半端に締められた蛸は痛みで暴れており、ヌメリもありなかなか掴めない。更に蛸の隠れたがる習性により、小袖の袖口から腕を登ろうと入っていく。この習性を利用したのが蛸壺漁だが、此度ばかりは困った。
そしてやっと足先を掴んでも、思いきり剥がせば肌が傷付く可能性もあり、Aさんが未婚の若い女性ということもあり、なかなか躊躇ってしまう。
「重、重!手伝え!」
俺の声に気付いた重が慌てて海から上がり、駆け寄って来る。
「どうしたんですか!?」
「締めきれていなかった蛸がAさんの腕から袖の中に入っていってる!お前の包丁貸せ!」
「っ! はい!」
Aさんが袖をたくし上げ、重が蛸の頭を押さえ、俺が目の間を慎重に突く。すると一部の足は白っぽくなり動かなくなったが、やりにくいのもあり、一度で完全には締めきれない。
蛸は遂に身ごろの方へ身を隠してしまった。
「先程よりは元気はなくなっていると思います。Aさん、自分で取れますか!?」
「やってみます…!」
「蛸の口には手をやらないで下さい、咬まれますから」
襟元に手を突っ込み、ぐぐっと引っ張ると少し剥がれてきた。場所が場所だけに俺達が手伝えずにいると、Aさんが助けを求めてきた。
「蜉蝣さん、重、手を貸して下さい…!」
「分かった!」
すかさず重が正面から襟の中へ手を入れて、俺は背後から手を入れた。流石の蛸も三人がかりでは抗いきれず、何とか剥がすことに成功した。
「よし!取れたぞ!」
「はぁ、やっと…!」
「すみません、私達の蛸が締められてなかったようで…」
「いや。兄貴、俺の蛸です。Aの驚いた声で不十分になってしまって…」
「だったら私が驚いたのが悪いです…お騒がせしました」
「とにかく、今日の蛸壺漁はもう終わりにしよう。
Aさん、蛸のヌメリが身体についたままだと良くないので洗い流して下さい。ついでに小袖も濯いだほうがいいです。風呂を沸かしますので…」
「身体を濯ぐのって海じゃダメですか?さっきお風呂沸かしてもらって入ったばかりなので申し訳なさすぎて…」
「そんな事は気にしなくていいですが、Aさんの気持ちも分かります。Aさんさえ良ければ、海水でも大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時