其の参 ページ40
朝餉を先に頂いていると、思いの外早く舳丸さんが帰って来た。
「お頭」
「おお、どうだった?」
「それが、すぐ気配がなくなりまして」
「そうか、ご苦労。ところでお前、チヌの刺身が食べたかったのか?それ相当硬いんだろ?」
「はい。硬いのが食べたい気分でした」
「珍しいこともあるもんだなぁ。まあ俺は食べないから関係ないけど」
舳丸さん、そこまでして私に獲れたての鯛の刺身を食べさせようとしてくれるなんて。
周りは「かてぇ」と言いながら刺身を咀嚼しているし、自分で湯引きする人もいた。第三協栄丸さんに至っては元々膳に刺身がない。
舳丸さんは私の
しばらく眺めていると、舳丸さんと目が合った。
「チヌの刺身…どうですか」
「コリコリしていて最高ですっ!!ずっと噛んでいたいです」
「それは良かったです。ずっと噛んでいて下さい」
やり取りを聞いた第三協栄丸さんは経緯を理解したようで、にやつきながら「おお〜??」と冷やかすような言い方で私達を見比べる。
「なんだ、舳丸はAに刺身を食べさせたかったんだな?」
「いえ、私も食べたかったんですよ」
「おいおい〜お前も可愛いとこあるじゃねえかあ〜!」
「舳丸さん、美味しいお刺身をありがとうございます!」
「……はい」
舳丸さん、余所者の私に優しすぎ…!!
ほんと早くいい人見つけて幸せになって欲しい!!
「そういえば、第三協栄丸さんはお刺身食べないんですか?」
「ああ、俺は魚が苦手でなぁ。だから魚の日は別献立なんだ」
ええ〜!今まで魚介を食べ過ぎて飽きて受け付けなくなっちゃったんだろうか?それにしても別メニューなのは調理係が大変だろうなぁ。
「今、飯当番の奴らが気の毒だって思ったろ?」
「いっ、いえいえ!そんな事は!」
「俺は水軍のお頭やってるけど、実は泳げないし、船酔いもするんだ」
「ええ!そうなんですか!」
それでも海賊さん達がしっかりついてくるって事は、この人の人柄が良いんだろうなぁ。
昨日の夕餉からご馳走続きだ。これは洗濯頑張らないとバチが当たりそう。これ食べて気合い入れよ!
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時