風呂焚き番の段(白南風丸視点) ページ35
「あーいたいた!Aさーん!」
Aさんは網問と間切と一緒にいた。
「白南風丸さん!」
「昨日風呂に入れませんでしたよね?お頭が今のうちに入ってくれって言ってます!私が沸かしますので!」
「ありがとうございます!実は身体が砂まみれで寝たのでジャリジャリするのが気になってて。よろしくお願いします!」
「へー、じゃあ俺も入ろ〜♪ 痛っ!」
冗談(?)を言った網問は間切に頭を叩かれた。
「コイツは私が見てるんで、安心して入って来て下さい」
「あはは。ありがとうございます」
Aさんは一旦部屋へ戻り、替えの小袖を胸の前で抱えて小走りでやって来た。そんな姿さえ兵庫水軍の中では新鮮だ。何しろここでは女っ気が全くないのだから。
「私は外で沸かしてるので、湯加減をそこの窓に向かって教えて下さいね」
「分かりました!」
薪を焚べていると、しばらくして中からザバザバと掛け湯する音が聞こえた。
「白南風丸さーん」
「はーい!熱いですか?ぬるいですか?」
「とてもいい湯加減でーす!」
「それは良かったです〜!」
薪がパチパチと爆ぜるのをしばらく眺めていると、舳丸の兄貴が声を掛ける。薄桃色の小袖は肩に掛けていて、髪からは水が滴っていた。
「白南風丸、風呂を焚いているのか?」
「ええ!お頭に言われまして!」
「そうか」
舳丸の兄貴はほんの僅かだけ口角を上げて去っていった。
中からは時々ちゃぷんと水音がして、今まさにAさんが裸で湯船に浸かってることを彷彿とさせる。
男社会なのだし、それくらいの妄想は許して欲しい。
「ふう」
妄想の最中、Aさんが小窓から顔を出したので驚いて尻餅をついてしまった。
「うわぁ!?」
「あ、驚かせちゃってすみません。この小窓から見える海がとても綺麗だったのでつい!」
海が綺麗だと言うこの人こそ、俺にとっては綺麗だ。
「Aさんは海好きですか?」
「はい!私、山の出身なので近くの水辺といえば川、沢、滝、池、城のお堀って感じで。空と海、こんなにいっぺんに水色を感じることがなかなかないんですよね!」
「へえ、Aさんは山のご出身ですか。ここから遠いんですか?」
「ええ。とても遠くからやって来て──…」
ふとAさんは後ろを振り返った。
「どうしました?」
「何か物音がしたような気がして…」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時