其の弍 ページ32
「オイ、おめェらァ!!」
廊下から巻き舌で声を掛けてきたのは、疾風さんだ。
「女の部屋に入るんじゃねェ!お前も易々と入れるな!」
「「「すみません!」」」
「で?深刻な顔して何があった?」
「いやぁ〜、別に…」
「あ〜〜、疾風の兄貴は聞かない方が…」
鬼蜘蛛丸さんと義丸さんは顔を見合わせると、困ったように笑って誤魔化した。疾風さんは義丸さん達の頭を叩いた。どうして二人は言い淀むんだろう?
すぐに訳を聞けなかった疾風さんは苛ついた顔で私に詰め寄った。
「A、何があったァ!?」
「実は、妖怪ヌレオナゴに遭遇したかもしれなくて…」
「ヌ、ヌレオナゴだとぉぉお!?」
途端に後退り、柱に頭を強打した。
「だ、大丈夫ですか!?」
「す、水軍館にヌレオナゴ!?嘘だよな!?嘘だと言ってくれェェ!!」
「しかし兄貴、Aちゃんの指にこの髪が絡んでいたそうで…」
義丸さんの袖で擦った時にひとまとまりになった毛玉を疾風さんに見せると、何とあの疾風さんが恐怖に怯えた顔で私の後ろから抱きついたのだ。
「ア"ーーーッ!!そんなもの見せびらかすなァァ!!外で燃やして来い!!」
「えっ本当に昨日の疾風さんと同一人物ですか!?」
「疾風の兄貴は度胸があって喧嘩に強いんですけど、幽霊や妖怪の類はからっきしで…」
「おま、お前は平気なのかァ!?遭遇したんだろ!?」
「と言っても寝ている時みたいで、記憶は無いんです。ただ、指に絡んだ毛の感触は一生忘れられないと思います…」
「ばっ馬鹿野郎!!生々しい事をいうんじゃねェ!!!
罰として!!俺の供をしろ!!ついて来い!!」
ついて来いって言いながら、私を盾にして後ろから押しながら進む疾風さん。強面なのに何だか可愛いかも。
「いいか!!俺が出てくるまでここにいろよ!?一歩たりとも動くんじゃねえぞ!!?」
で、やって来たのが厠。もう日が出ているのに一人で厠に来るの怖かったのかぁ。これほどまでとは。そりゃあ義丸さん達も言い淀む訳だ。
66人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時