其の漆（間切視点） ページ30
「何言ってるんだ、酔っ払いの指くらいすぐ外せるだろう？」
蜉蝣の兄貴がAさんの指を外したかと思えば、小袖の別の箇所を掴み直す。また外したら、これまた別のところを掴む。
「この小袖がよっぽど気に入ったんだな…間切、上脱いでAさんに一晩貸しとけ」
「それが良さそうですね…」
そうしてそっと小袖を脱いで、Aさんから離れようとした時──…
「うわ！？」
首から前に垂れた髷を引っ張られ、Aさんに覆い被さるような体勢になってしまった。
咄嗟にAさんの頭の両側に手をついたので、Aさんには触れていない。この瞬発力誰か褒めて！
「何やってんだよ間切！お前がモタモタしてるから！」
「え、すいません！」
俺のせいなの！？
「…仕方ない。お前はしばらくそうしていろ。Aさんも一晩中掴んではいまいだろう」
「えっ！？兄貴達行っちゃうんですか！？」
「寝ている女子の部屋に男が複数居座るのも良くないからな」
嘘でしょ！？本当に置いてった！！
それだけ俺が兄貴達に信頼されてるってことだろうけどさあ！
俺、陸酔いがあるから体力的にキツい…！
それがなくとも理性的にも一晩は耐えられそうにないけど…。Aさん、頼むから早く離してくれ…！！
……と思っていたが、意外にもあっさりと髪を掴んでいた手が離された。
「…あ、あれ…。なんか拍子抜けだな…」
Aさんの上から退いて、小袖を着る。
……何だかここだけ切り取れば、まるで情事の後みたいな…
「ゴッファ！！」
ダメだ鼻血が出た！絶対に垂らさないようにしなくては！
素早く退室だ！
今はAさんの事は何も考えるな！
あれは義丸の兄貴の部屋だ！
俺が抱っこしたのは義丸の兄貴！
蜉蝣の兄貴達が見たのは義丸の兄貴の尻！
俺が覆い被さったのも義丸の兄貴！！！
……いやそれはそれで陸酔い発動しそう〜！やめよ！！
水軍館を飛び出すと、蜉蝣の兄貴達がぎょっとしてこちらを見て慌てて桶を差し出した。
「……え？」
「口元押さえてたからAさんの上で吐きそうになって慌てて出てきたのかと。違うのか？」
「突然の鼻血です」
「そ、そうか」
「Aさん、すぐ離してくれて助かりました…」
「…にしては残念そうな顔してるが」
え？そんなまさか！？残念！？俺が！？
「そんな事ないです！！」
……たぶん！！！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜！めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます！！私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります！まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました！！最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて！！しかも神作で！！！本当ありがとうございます！！大好きです！！ (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…！？恐縮です…！お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します！ (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます！完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます！鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です！キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます！どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています！ (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年9月4日 4時
