其の陸(間切視点) ページ29
「Aさん、Aさん」
軽く揺すってみるが起きる気配はない。
「こりゃもう朝まで起きないな」
「部屋まで連れて行ってあげましょう」
「そうだな」
Aさんの汲んできて下さった海水で一時的に回復した私達は、Aさんの部屋まで協力して運ぶことになった。
「私が運びますので、鬼蜘蛛丸の兄貴は布団敷いて貰えますか?」
「ああ、分かった」
Aさんの背中と膝裏に手を回して持ち上げると、鬼蜘蛛丸の兄貴と蜉蝣の兄貴が目を見開いたのち、背を向けた。
「…? どうしたんですか兄貴達?」
「……いや、それが」
「Aさんの、小袖の裾が短いから…」
「え!?まさか中を覗いたんですか!?」
「見えてしまったと言え!!」
「もう!本人が寝ていて良かったですよ!!
水軍館の戸を開けて下さい。他の人に見られる前にすぐ運んでしまいましょう」
「待ってくれ、尻に砂が付いているんだ、払ってやらんと布団が砂まみれになるぞ…」
蜉蝣の兄貴が、目を瞑って言う。
「は、払うって、一体どうやって…!?」
「そりゃあ、誰かが手で払うしかないだろう…」
「誰かって誰がやるんです!?」
「鬼蜘蛛丸…」
「ええっ!?私ですか!?」
「手拭いで目隠ししよう」
蜉蝣の兄貴が鬼蜘蛛丸の兄貴に目隠しをする。
「よし。鬼蜘蛛丸、Aの砂を払ってやってくれ」
「は、はい…」
鬼蜘蛛丸の兄貴が手を伸ばす。
「っ!!?」
しかしすぐ引っ込めて、目隠しを外してしまった。
「だ、ダメです蜉蝣の兄貴!手探りだと余計な部分まで接触してしまいます!」
「そ、そうか。だったらなるべく見ないようにして…」
「間切、ずっと抱えたままで大丈夫か?」
「は、はい。それは全然…」
鬼蜘蛛丸の兄貴がチラチラと見ながらそっと砂を払うと、Aさんは俺の腕の中で身じろぎをした。
「ん………」
擽ったいのか、俺の小袖を掴んで堪えているようだ。
「鬼蜘蛛丸、早く終えろ…。何だかすごく悪い事をしている気分になってきた…」
「概ね取れました!もう行きましょう!」
水軍館に入り、なるべく他の人達に見られないようにして義丸の兄貴の部屋へ急ぐ。
鬼蜘蛛丸の兄貴が布団を敷いてくれて、俺がその上に横たえる。
「……あっ」
「どうした間切、まさか変な気を起こしたんじゃないだろうな…!?」
「ち、違いますよ!Aさんが俺の小袖を掴んでいて離れられないんです!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時