其の参(義丸視点) ページ26
Aちゃんの取り皿は蛸以外を乗せた形跡がない。
「まだ蛸しか食ってないじゃないか。俺の釣った鯛も食ってくれよ」
大皿に乗って、半分くらいつつかれた鯛を取り分ける。
「義丸さんが釣ったんですか?」
「ああ。俺は船から釣って、
「へえ……んん、美味しい!」
「鯛の刺身は釣りたては固いからな、さっき浜で塩焼きにしたんだ」
「あ、でも私、釣りたてのコリコリの鯛の刺身も結構好きですよ!ずっと口の中で噛んで味わいます」
「Aちゃんって、通だねえ〜」
さっきから重がこっちをチラチラと見てるな。こりゃ退屈しない二週間になりそうだ。
「…ん?砂が付いてるぞ。取ってやるよ」
「ひょ!?」
胸の谷間の砂粒を取ってやった。
よく見るとまだあちこちに付いている。砂でも浴びたのか?
二箇所目を取ろうとすると慌てたAちゃんが胸元を押さえた。
「だだだ大丈夫です!!もういいです!!」
重が弾けるように立ち上がる。
「義丸の兄貴ィ!!Aは花街の娘とは違って忍術学園からの預かりものなんですから手ェ出さないで下さいッッッ!!!」
「なんだ、人聞き悪いなァ。砂取ってやっただけだよ。なあAちゃん?」
「エッ!?いやまあ、そうですけど…」
「ほらな?」
したり顔で重を見ると、悔しそうにキーキー地団駄を踏んでいる。
「こら重、落ち着け。ヨシもいい加減にしとけよ」
ちょっと調子に乗りすぎて、お頭に注意されてしまった。
「「へい…」」
俺が元の席へ戻ると、Aちゃんはお頭の斜め後ろへと移動し、頭を下げた。
「兵庫第三協栄丸さん。此度は二週間の逗留をお許し頂き、ありがとうございます。そればかりか、このような盛大な催しまで…」
「そんな畏まるなよ!俺達兵庫水軍も忍術学園にはよく世話になっていてな。その礼が魚のお裾分けだけでは足りないなと思っていたところだ。
それに海の男達は何かと理由をつけて宴会をしたがるものなのさ」
お頭は箸を置いてちゃんとAちゃんへ向き直った。
「俺達は共食儀礼を重んじているんだ。同じものを食べ、同じものを飲むことで仲間としている。宴をして結束力を高めているってとこかな」
Aちゃんの視線が自分の盃に向く。
「あっお頭──…」
「お頭!コイツは──…!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時