其の参 ページ23
間切さんがかつての留三郎のように、大量に鼻血を出してから気を失われた。随分心配したけれど、網問さんは「そのうち起きるでしょ」と言っていた。
他の海賊さん達もやってきて、数人で水軍館へ担がれていき、その場には私と網問さんが残された。
「……えと、笑っちゃってごめんね?」
「……気にしていません」
「なんだそっか、怒らせたかと思ってた」
あ、この人言葉通りに受け止める人だ。随分ぶっきらぼうに言ったつもりなのに。
「歳は幾つ?」
「…十六です」
「え、一緒!Aって呼んでいい?」
「別にどうぞ」
「同じ歳なんだからAも敬語じゃなくていいよ。ついでに網問って呼んで!」
「分かった、網問」
ちょっと私の感覚とはズレてるけど、悪意のかけらも感じないし、悪い人ではないんだろうな。
「洗濯物取り込んでたの?手伝うよ」
「…うん、ありがとう」
網問は忍術学園の六年生達と一つしか変わらないのに、頭ひとつ分は大きかった。洗濯物の取り込みもお茶の子さいさいだろうな。
再び私が背伸びをして取り込み始めると、網問がふと私の方を見た。
「…小っさ!!!届いてないし!」
「ギリギリ届いてるから…!」
どうせ私はチビですよーだ!
「届いてないよ。ほら、これ使いなよ」
その辺に置いてあった古い木箱だ。高さは一尺くらいで中には何も入っていない。これを踏み台にしろと。
「あっはは!それ乗っておんなじくらいだね!どんだけ小っさかったの?」
この子、努力でどうにもならない事をめっちゃ馬鹿にしてくるね!?
「小さい小さいってうるさい…」
「あれ、怒った?」
怒ってないと言えばひたすら馬鹿にされるだろう。ここはしっかり言ってやらねば!
「怒った」
「どうして?」
「は?」
「どうして怒るの?Aは女の子だし、別に背が高い必要ないでしょ?」
「え…?」
「背が小さければ代わりに大きい人がやればいいし。俺は小さい方が可愛らしくて好きだし。だからポンAでいいじゃない」
「ポンA…?」
「ポンは小さいって意味。ここからずっと北にある俺の故郷の言葉だよ」
そうか。網問はこの辺の人じゃないんだ。それで感覚が少しズレてるのかな。
私もそうだ。ずっと遠い未来からやって来て、皆と感覚が違うなと感じることは時々あった。
「網問と私は一緒だったんだ」
「ん?何が?」
「…ふふ、何でもない!早く終わらせよ!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時