其の弐(間切視点) ページ22
転けながらも、洗濯物を飛ばすまいと必死に掴んだのだろう。彼女は左手で握りしめていた褌をヒラヒラとこちらへ見せた。
褌は皆同じだから、誰のだか分かるように記名してある。その褌には紛れもなく俺の名前があった。
「あ、それ私の褌…」
「そうだったんですか?間切さんって言うんですね」
「はい。こちらは網問と言います」
「そうですか」
網問はこの子の砂まみれの顔見て酷く笑っちゃったんだよなぁ。網問とは視線を合わせようとしない。
「私はAと申します。忍術学園の居候で、二週間こちらにお世話になります」
「宜しくお願いします、Aさん。
ってそれより、怪我はしていませんか!?夏場の砂は熱かったでしょう!?」
「あちこちちょっとヒリヒリするくらいですね、大丈夫です。でも小袖の中にも砂がいっぱい入ってしまって、それがジャリジャリして気持ち悪くて」
四つん這いになり、小袖の襟をパタパタと扇ぐようにして砂を落とそうとしている…!
「待っ、その体勢は──」
胸元が見えそうになってしまうから!!丈が短いから後ろもダメだし!!
「こういう時、どうしたら良いんですかね?」
「海の男ならば、小袖を脱いで海に入り、砂を落としますが…」
「海に入る…」
「Aさんは真似しないで下さいね!?」
「はい、さすがに皆さんの前でそれはできません」
よ、良かった。
と思ったのも束の間。襟を捲り、濡れた手拭いで胸元を拭き始めたのだ!
見えそうで見えない。そんな攻防(?)がすぐそこで繰り広げられている……!!
いけない、女性の胸元を凝視するなんて失礼な事!
俺の褌を砂まみれになって死守してくれた人だぞ!褌の紐を大事そうにギュッと握り締めて。
俺の褌。俺の褌を……
網問が、俺の耳元で呟いた。
「兄貴、露骨に見過ぎ…」
「ゴッファ!!!」
俺は急に何かの限界を迎え、鼻血を噴出した。
「わあ!?間切さん!?」
「間切の兄貴ぃ!?」
「も、問題ありません……酷い陸酔いの後は時々こうなるんです」
嘘ですけれども…。
「え、よく介抱するけどそんなの見かけた事ないけど?」
掘り下げんな!網問の馬鹿!
「たまたま網問がいない時だったんだよ!」
「大丈夫ですか?鼻血が出た時は涼しいところで鼻を押さえてやや前屈みの姿勢でいるといいですよ」
さっき胸元を拭った手拭いを海の水で洗い流し、それで顎に垂れた血を優しく拭ってくれる。
そこで俺の記憶は途絶えた。
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時