其の肆 ページ13
「………清八さん?」
私は何も言わない清八さんの顔を覗き込んだ。
「あはは、すみません。Aさんの言葉が意外だったものですから」
「い、意外ですか?」
「はい。急いでくれとおっしゃるお客さんはいても、早い到着を残念がるお客さんはAさんくらいかと」
「乗馬があまりにも楽しくてつい…子供みたいな事を言ってすみません」
「いえいえ、馬や乗馬を気に入ってもらえて、馬借として嬉しく思います!
私もAさんに加藤村に来て頂くのが楽しみになって来ましたよ。きっと馬にも何度か乗って頂く機会があると思います」
「わ、嬉しいです!」
「そろそろ行きましょうか。遅くなって兵庫水軍の皆さんが心配するといけませんから」
再び馬に挨拶をして、乗せてもらう。
「そうそう、今朝コレステロール号が何か察したようで、Aさんの送迎に行けないことに腹を立ててたんですよ〜」
「ええ〜!なんて健気なんでしょう…可愛いですね」
「ははは、帰ったらコレステロール号にAさんが可愛いって言っていたと伝えておきます」
しばらく早駆けした後、歩みがゆっくりになった。
松の木がたくさん生えている林に入ると、潮の香りが鼻に抜けた。
「海の匂い…!」
「ここは兵庫水軍の防風林ですから、この先はすぐ海ですよ」
松の木の間からちらちらと人影が見えて、私の胸は高鳴った。
海賊さん達には受け入れてもらえるだろうか…?
「あ、兵庫水軍の総大将がいましたよ。兵庫第三共栄丸さ〜ん!こんにちは〜」
「加藤村馬借の清八君!」
近くまで歩み寄ると、清八さんと私は馬から降りた。
まるで船の名前のような人は、立派な口髭を蓄えたワイルドな男の人だ。
「久しぶりだな!」
「はい、ご無沙汰しております」
「で、こちらの可愛らしいお嬢さんは?もしかして清八君の良い人か!?」
「いえいえ〜そうじゃありませんよ」
「忍術学園から参りましたAと申します。しばらくこちらでお世話になります」
「ああ!君がか!そうかそうか!てっきり清八君の恋人かと思った!ガッハッハ!………ん?」
第三共栄丸さんは突然真顔になり、豪快な笑いが止まった。
「どうかされました?」
「え〜〜うっそぉ!?忍術学園から来る子って、女子だったのかぁ!?!?」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時