【忍たま】君の想いは花筏【共通話５】 (ページ49)

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其の参（滝夜叉丸視点）ページ49

「えっ、何してるの…」

酒を片付けてきてくれた喜八郎が絶句するのも無理はない。今、私はAさんに押し倒され、馬乗りになられている状態だからだ。

「お前が食堂に行ってしばらくするとAさんが寡黙になって、顔を覗き込んだらこうなった！」

喜八郎がAさんの顔色を窺う。

「目が据わっている。もしかして」

「ああ。酒に酔ったようだ…！」

「嘘でしょ、飲み込まずに吐き出したのに？
……あの、ご自分のお名前言えます？」

「…たきゃーしゃまる」

「それは私の名前…。ではこちらの男は？」

徐に喜八郎へ視線をやる。

「……あやれ」

「綾部喜八郎ですよ。き、は、ち、ろ、う」

「きやちろ」

くぅっ！舌っ足らずでとても可愛らしい。しかも我々に対して何気に初めての呼び捨てだ。

「もう一度！私の名前は！？」

「……たきぃ」

「ありがとうございます！！！」

「ほらAさん、そろそろ滝から降りましょうね」

脇を抱えて布団へと下ろすと、喜八郎の右手拳に興味を持って、指を解こうとする。

「あ、忘れてた。かりんとう一つだけ持ってきましたよ」

ほら、と目の前に差し出すと、受け取ることなく喜八郎の手から食べた。

「危なっ、僕の指まで齧られそうだった…って、うわっ！？」

今度は喜八郎が押し倒されたが、馬乗りではなく腹這いだ。

「ちょっと、この体勢は色々当たっちゃうから困るんですけど…？」

「喜八郎、これはまさか、惚れ薬を盛られたのでは…！？
ほら、先程三木ヱ門が言ってたろ、デモシカさんが小鉢の蛸を食べさせたって。その時体内に入ったのだとしたら…！」

「酒との相乗効果でこんなことに！？」

「どうする！？善法寺先輩にお伝えするか…！？」

「そうすると僕達が酒を飲ませたって扱いになるんじゃない？食堂のおばちゃんに怒られ、善法寺先輩に怒られ、Aさんに嫌われて…」

「いやでも事情をお話しすればご理解は得られるだろう…」

すると虚な目をしたAさんが、喜八郎の口を手で塞いだ。そして胸に突っ伏した。

「……うる、さい」

「ご、ごめんなさい…？」

「……ぐぅ」

「ね、寝た！？喜八郎、Aさん寝たぞ！」

「ふう…それじゃあ僕達も寝ようか」

「お前、Aさんとえらい体勢になっているっていうのに、反応薄いな…」

「何言ってんの、滝がいなけりゃ迷わず犯すよ。今○(勃)ってるし」

「そんなこと真顔で言うな〜ッ！！」